ドリーミー刑事のスモーキー事件簿

バナナレコードでバイトしたいサラリーマンが投げるmessage in a bottle

2022-01-01から1年間の記事一覧

言葉にできないものにこそ 『窓辺にて』の感想

別人格であるアーティストを安易に比較することは控えるべきと思いつつも、映画『街の上で』を観て以来、今泉力哉は濱口竜介と同じくらい称賛されるべき映画監督なのではないかと感じていた。丁寧に描きこまれた群像劇、フィクションとノンフィクションの境…

2022年11月の日記(リヒター、ツルロックとカクバリズム20周年)

11月2日 高速に乗って豊田市方面へ。車中BGMは昨日出たばかりのサニーデイ・サービス『DOKI DOKI』。気がつくと制限速度をすぐ超えちゃうし、目的地で降りたくなくなるから本当に危険。まずは鞍ケ池公園にできたスノーピークのカフェへ。蔦屋書店とスノーピ…

最と高、その間に入るもの。サニーデイ・サービス『DOKI DOKI』

最高。それも最と高の間に「っ」が5個くらい入るやつ。スピードメーターを振り切って、青空を切り裂いて、俺たちをどこか遠く、取り返しのつかない場所まで連れていってしまうロックンロール。サニーデイ・サービスの最新作『DOKI DOKI』について言うべきこ…

ゆく憂さくる憂さロックンロール(2022年10月の記録)

10月1日自宅軟禁解除。いきなりの休日出勤をキメてから名古屋城で開催されていた「Social Tower Market」へ駆け込んだ。10月とは思えない暑さの中、エマーソン北村 with mmmのライブ。ドラムは菅沼雄太。めちゃくちゃ豪華じゃないですか。エマーソンさんのキ…

カルチャー、コロナ&ギックリ腰(22年9月の日記)

9月はギックリ腰になったり、給湯器が壊れて一週間スーパー銭湯に通うハメになったり(大出費)、中盤にはギックリ腰を再発させ、さらに家族全員がコロナに感染するというつらい30日間であった。 以下、厄落としの日記。 9月3日 映画『NOPE』を観にいく。私…

8月27日の思い出②(「表現の不自由展 その後」を観た話)

(前回からの続き) ハポンを後にして、急いで完全予約制の栄市民ギャラリーへ。そこに待つであろう殺伐とした光景を想像すると、良いライブであたためてもらった記憶が台無しになりそうで気持ちが重くなる。ライブ中に取ったメモを、心の中の別の箱にしまう…

8月27日の思い出①(ハポンで「いざッ、now」を観た話)

8月27日土曜日。 まずはPAPERMOON細田さん主催のイベント「いざッ、now」を観に行くために鶴舞のハポンへ向かう。 トップバッターはPAPERMOON。この日はスリーピースのバンド編成だったんだけど、これがすこぶる良かった。細田さんはソングライターしてロッ…

SONICMANIAでコーネリアスのライブを観た

2021年8月20日土曜日の夕方、私は苗場スキー場の端っこでタコスを食べていた。本当なら今ごろ、この森の向こうのグリーンステージで「STAR FRUITS/ SURF RIDER」を聴いていたはずなのに…という空しさと悔しさを抱えながら。あの騒ぎは一体何だったのか。今で…

東郷清丸ワンマンコンサートを開催しました

久しぶりにライブを主催した。その名も「東郷清丸ワンマンコンサート」。私のような音楽好きがイベントを企画する場合、その価値観にあった何組かのアーティストに出演してもらうということが普通だと思うのだけれども、今回はワンマン以外の選択肢はあまり…

空白を埋める③(佐野元春『今、何処』の話)

私にとって佐野元春というミュージシャンは、接してきた時間は決して長くはないのだけれども、「いつ・どこで・どんな作用をもたらしてくれたか」ということを明確に説明できる、とても重要なアーティストである。 一番最初は今から22年前。デビュー20周年記…

空白を埋める②(千里天国と森道市場)

ゴールデンウィークの後半、ソニーのwebマガジン「otonano」から大江千里のアルバムレビューの依頼を受けた。大江千里はなんと言っても私が物心ついて最初に好きになったミュージシャン。小学校三年生の頃、ミュートマジャパンで流れる「YOU」のMVをたまたま…

空白を埋める①(ゴールデンウィークの記録)

「今年はブログをマメに書こうー」と心に決めたのに、気がつけば2ヶ月以上も放置してしまった。書くことが何もなかったわけではなく、書くことがありすぎてタイミングを逃し続けてしまっていたのだ。最後の更新は4月28日。なのでゴールデンウィーク以降のこ…

2015年・2022年

2015年は2022年の自分の骨格を作った濃密な季節だった。そのことを思い起こさせる出来事が多い4月だった。 2015年最大のトピックと言えば、まずは安保法案に反対するカウンターアクションとの遭遇。結局法案は成立してしまったし、安倍晋三は居直り続けてい…

日経新聞を解約した理由

少し前に映画館で「アイの歌声を聴かせて」というアニメ映画の巨大なポスターを目にした。どこからどう見ても健全そうな雰囲気で、声優も名の知られた俳優が起用されていたので、かなり大きな資本が投じられた作品という印象を受けた。しかしそのポスターを…

映画「ハッピーアワー」体験記

濱口竜介監督「ハッピーアワー」を名古屋シネマスコーレで観た。観たというよりは体験したという方がいいだろう。映画ではなく、どこかにある現実を。 上映時間は5時間17分。休憩を入れると約6時間。もちろん自分史上最長の映画。堪え性のない私が果たしてこ…

隔離期間の記録

妻がコロナ陽性と判定され、家族全員が濃厚接触者に。下の娘と行くはずだった旅行は急遽キャンセル。隔離モードに突入。 春休みのほとんどがつぶれてしまう子どもたちには悪いが、こればっかりは仕方がない。この隔離生活を22年春休みの思い出にしてもらうし…

檸檬企画「曙の音」に行った日の話

先日配信デビュー曲も素晴らしかった檸檬のお二人が企画した「曙の音」に行ってきた。会場は金山ブラジルコーヒー。「めっちゃおいしい食べ物がたくさんあるで」という甘言で下の娘も一緒に連れ出した。 最初に登場したのは東京からやってきた(すみません愛…

初めて家主のライブを観た話

これまで二回企画されて二回ともコロナでキャンセルになった家主のライブin名古屋。まさに念願のライブ初体験。セカンドアルバムが出てようやく…である。 しかしライブは見たことはないものの、彼らの音楽は自主制作のCD-Rの時から聴いているし、配信ライブ…

Buffalo Daughterのライブを観た

うっかり発売日を忘れて一度はソールドアウト。定員が追加されたおかげでなんとか観れたBuffalo Daughterのライブ。ため息が出るくらいにカッコよかった。最新作『We are the times』は2021年屈指の名作だと思うんだけど、あの緻密に構築されたサウンドを、…

大友良英・細田成嗣 対談「内田修ジャズコレクションの価値とは」

私の住む愛知県岡崎市は「ジャズの街」を自称していて、駅前の地下道の壁にジャズを演奏する人が描かれていたり、年に一度ジャズフェスティバルが開かれたりしている。 なぜ「ジャズの街」かと言うと、1960年代から自身が経営する病院の中にスタジオを作るな…

臆病で利己的な私がこの一週間考えていること。

民主主義とは何か。そんな雑な問いに対して私なりに答えるならば、「永遠に決着のつかない綱引き」となる。 言論という綱を、一定のルールに基づいて、意見や立場が異なる人たちが引っ張り合う。あちらが強く引っ張れば、こちらも強く引っ張らなければならな…

『フレンチ・ディスパッチ』の話

2回目の『フレンチ・ディスパッチ』を近所のユナイテッド・シネマへ。定員500名のスクリーンに観客はわずか5人。杉本博司の劇場シリーズのような光景だった。こんな田舎の映画館で上映してくれてありがとうユナイテッド・シネマさん。 しゃらくさいものが苦…

GEZANとトリプルファイヤーのツーマンを観に行った日。

トリプル・ファイヤーとGEZANという、世にも奇妙な組合せのライブ。 オミクロンと猛烈な寒さを避けるため、浜松までは電車ではなく車で向かう。朝は雪が振ったけど、夕方にはすっかり晴れた。浜松に来るのは20年3月の宇壽山貴久子さんの写真展とトークショー…

「ミニマル/コンセプチュアル展」を観に行ってPINKMOON RADIOを聴いた日。

愛知県美術館で開催されている「ミニマル/コンセプチュアル」展へ行ってきた。デュッセルドルフのギャラリスト・ドロテ&コンラート・フィッシャー夫妻が収集した作品を中心に、60年代から70年代にミニマル/コンセプチュアルアートというジャンルを確立させた…

有休の日の散歩。

本日有休。しかし休演ではない。 案の定、朝から上司からしょうもない用事でメールやらチャットやら電話が来てうんざり。別にそんなに休みたいわけではないのだが、休みを邪魔されるということ自体がストレスなのだ。 このまま家にいると結局仕事をしてしま…

どついたるねんを聴きながら豊田市美術館「絶対現在」展を観た日のこと。

「百鬼夜行」を観に行った次の日。英検を受けたいという娘の勉強に付き合いながら、豊田市美術館でもらったパンフレットを眺める。昨日は時間がなくて断念したコレクション展に河原温や杉本博司の作品が展示されてたのか…。行きたい。しかし時間がない。と一…

ホー・ツーニェン「百鬼夜行」を観に行った日のこと。

豊田市美術館で開催されていたホー・ツーニェンの個展「百鬼夜行」は二回観た。でもあともう一回は観たかったな…というくらいの見応えだった。 一度目に観た時は、妖怪という古典的・土着的な存在に新しい命を吹き込む手法の鮮やかさ、視覚・聴覚を完全に奪…