ドリーミー刑事のスモーキー事件簿

バナナレコードでバイトしたいサラリーマンが投げるmessage in a bottle

夏休みの始まり(7/22渋谷にて)

2023年の夏休みは、スパークスから始まった。7月22日渋谷duoの追加公演のチケットをえいっと勢いで取ったのだ。その背中を押してくれたのは、私にいつも古今東西の音楽の素晴らしさを教えてくれる澤部渡氏が大枚をはたいてスパークスのハリウッド・ボウル公演に行くという話に他ならない。スカートを愛する者として、「NICE POP RADIO」のヘビーリスナーとして、このビッグウェーブに乗らなきゃウソでしょと思ったのだ。ともかく妻と二人、新幹線で上京し、BYGで気持ちを盛り上げてからいざduoへ。

 

会場はもちろん超満員。かっこいい大人がたくさんいるぞ…という感じ。

「So May We Start」「The Girl Crying In Her Latte 」でいきなりぶち上がる。年齢のことを強調するのは野暮ってもんだが、ラッセルは74歳、ロンに至っては私の父親より年上の77歳。こんなかっこよくてチャーミングな天使みたいな人がいていいのか…とクラクラする。バックを固めるバンドの演奏もさすが鉄壁のリズム。黒子よりも少しだけ前に出てくる感じにプロフェッショナリズムを超えた信頼関係を感じさせる。

三曲目は「Beaver O’lindy」。サビの「B E A V E R!」というシャウトでみんな腕を上げるのだが、私の少し前で誰よりも真っ直ぐに腕を突き上げていた男性こそ、なんとスカート澤部さんだった。背中からゆらゆらと立ち上る真っ直ぐな愛の炎。一生あなたについていきますよ…と拝んだことは言うまでもない。

新作を中心に演奏される曲すべてが強烈キテレツ。なのに一発で心の奥深く入り込んでくる人懐こさがある。中でも不思議なのが陳腐化しがちな電子音にまったく古さを感じないところ。圧倒的な楽曲の個性が時の流れをも制してしまっているのだろうか。

MCではゆっくりとした英語で語りかけ、狭いステージを動き回ってファン一人ひとりに目配せしてくれるラッセル、同じくストレンジなキャラクターを貫きつつもちょっとした仕草で感謝を伝えてくれるロン。もちろんこれも長年鍛えてきた芸事の一部であることは理解しつつも、こんな大きな暖かさに包まれたライブは今まで体験したことがなかったな…と気持ちがウルウルする。

そして終盤になっても、というか曲を重ねるごとにラッセルの歌声は力強さを増していき、名曲「Bon Voyage」はもはや神々しく響いた。「The Number One Song in Heaven」のロンのダンスとの対比は今思い出してもちょっと泣ける。

そして玄人ばかりのお客さんもさすが盛り上げ上手。ロンとラッセルの感激した表情を引き出したのは皆さんの愛の賜物。スパークス素人の私たちも良いものを見せて頂いたと感謝するしかなかった。

高揚したまま会場を後にして、20年ぶりくらいの麗郷へイン。同じ丸テーブルに座った人たちもスパークス帰りだった。いやめちゃくちゃ最高でしたよね?

 

それにしてもナイポレを聴いてなければこんな体験出来なかったな…という気持ちでこの夜の感動をツイートしたら、翌週の放送で澤部さんが読んでくれて心臓が止まるかと思った。ありがとうございました。