ドリーミー刑事のスモーキー事件簿

バナナレコードでバイトしたいサラリーマンが投げるmessage in a bottle

Buffalo Daughterのライブを観た

うっかり発売日を忘れて一度はソールドアウト。定員が追加されたおかげでなんとか観れたBuffalo Daughterのライブ。ため息が出るくらいにカッコよかった。最新作『We are the times』は2021年屈指の名作だと思うんだけど、あの緻密に構築されたサウンドを、ノークリックの生演奏で鳴らそうとする時点でコンセプチュアルでフィジカルでラジカル。無機的なサウンドを極めていくほどに人間の肉体性が際立っていくという最高のアンビバレンス。そのグルーヴを椅子に座ったまま浴びなければならないストイックなシチュエーションもまた作品の一部という気がした。

 

それにしても大野由美子はよくあんな同時にいろんな楽器を演奏しながら歌まで歌えるものだと感動してしまうし、シュガー吉永の、エゲツないくらいにワイルドで、時に繊細かつ技巧的なギターには惚れ惚れしてした。そして要所で見せるムーグ山本のスリルとユーモアに富んだスクラッチもこの音楽がいかに特別なものであるかの象徴のようだった。そしてサポートの二人、元ZAZEN BOYSなどと書くまでもない松下敦のドラミングは人間と機械の最良を抽出していたし、ステージの上で写真を撮っていたtakeru okumuraの自由で軽やかな佇まいはステージに絶妙な軽みをもたらしていたように思う。

そして私の大好きな「Don’t Punk Out」のディレイが最高に気持ちがいいぜ…と痺れていたところ、最後のメンバー紹介でPAはZAKと紹介されて深く納得した。

 

MCでシュガーさんが「名古屋はお客さんが入らないからずっと飛ばしてた」とおっしゃっていて、今回のライブが20年ぶり2回目だった私は恐縮していたのだが、たぶん若い時に観た時よりも、深く受け止めるこもができたのではないだろうか。ポップミュージックをユースカルチャーとして捉えると、加齢はミュージシャンにもリスナーにもネガティブな作用を与えるようなイメージがあるが、彼らのライブを観ていると、そんなの本当は違うんじゃないかという気がしてしまった。少なくともアートの世界においては、60代、50代は脂の乗り切った年代と言ってもいいはず。音楽もまた例がではないだろう。ムーグ山本さんは還暦を過ぎてるし、他のメンバーも私よりもだいぶ年上。まだまだカッコいい時間は続くんだぜ、と言われているようですごく勇気が出た。