ドリーミー刑事のスモーキー事件簿

バナナレコードでバイトしたいサラリーマンが投げるmessage in a bottle

スカート 、トリプルファイヤー、ミツメのライブを2日で観た週末の話。

「月光密造の夜」が私の生き方をもんのすごく深いところからひっくり返してしまった…という話はもう何回目だよってくらいにしているので詳しいことは割愛するとして、スカートのデビュー10周年を飾る「真説・月光密造の夜」もあわよくば東京まで遠征してやろうと思っていたわけですが、断念。その経緯は言わずもがななのでこれも割愛。


コロナ禍で苦境にあるミュージシャンというのはたぶんたくさんいる…というか苦しんでないミュージシャンなんて一人もいないとは思うのだけれども、スカート澤部氏は毎週ラジオで近況を話してくれるし、日記も書いているし、自宅から配信していた「在宅・月光密造の夜」で感極まる姿など、かなりリアルタイムで心情を共有されていたように思うので、ようやくたどり着いたこの日のライブを(配信とは言え)目撃できたことは誠に勝手ながら感慨深いものがあった。

「ハル」「ゴウスツ」という初期の名曲から始まったライブだが、当たり前だと思っていた日常が姿を消してしまった今だからこそ、新たな意味を宿してしまった歌詞の一つひとつが心に刺さって仕方がない。澤部渡にしか書けない色濃い悲しみと、かすかに差し込んでくる光。2020年の残酷な日々すら美しさに変えてしまうこの人は、やっぱりポップミュージックに選ばれた人…などと無責任なことを思ってしまう。音声が途切れたり画像がちょっと粗かった気もしたけども、あれはタケイグッドマンオマージュに決まってんだろ。←後に機材の不調によるものとアナウンスあり

 

翌日はもともとミツメの配信ライブを観る予定だったけど、つくばロックフェスに出演しているトリプルファイヤーの配信もあることに気づく。ということはつまり二日に分けて「第7回月光密造の夜」を観るようなものじゃないかと急いでプールから帰ってきてYouTubeにアクセス。昨日スカートのライブに出ていたシマダボーイがサポートに入ってるのも同じイベント感がある。夕食前の慌ただしい時間帯である上に、爆音ノリノリで聴いてるところにお義母さんが猫と遊びに来たりしちゃって、なかなか集中して観ることが難しかった。が、特にまだ音源になっていない楽曲のビートが、呪術的にヤバいプリミティブさをまとっているように思われ、早くちゃんとした形で聴きたいという欲望がわきあがってきた。それにしても、子供が一生懸命宿題をやってる隣で「俺は酒飲んだらおもしろい」などと歌うバンドをヘラヘラと観るのはものすごくいけないことをしているような気持ちになった。


さて、19時からはいよいよ大トリのミツメ「mitsume Autumn Camp」である。

音も映像も、これ録画じゃないの?と勘違いするほどの美しさで、さすがの完璧主義…と唸ってしまう。

私にとってミツメとは、楽曲ごとに設定した枠の中で、一定のレンジや密度、そして湿度と温度を厳密に守りながら、未知の音を構築していくバンドだと思っているのだけど、この日新たなアレンジで披露された「停滞夜」「cider cider」といった過去曲では、そのレギュレーションから逸脱して宇宙空間に飛び出していくような瞬間が何度もあって、関節が外れそうになるくらい興奮した。やっぱりミツメってめちゃめちゃライブバンドですよね!ラストの「煙突」はイントロ前のノイズの部分でもうすでにグッときてしまったよ。それにしてもこんな演奏を、声も上げることも立ち上がって観ることも許さないコロナウィルスのサディスティック性は本当に異常だ。

 

この週末は他にもつくばロックフェスで東郷清丸のライブやSAGOSAIDの無観客ライブも観て、自宅に居ながらにして音楽を満喫したのだけれども、素人の直感としては配信ライブって、コストを収入で賄うレベルに達していないのでは…という気がしている。これまで私が観た中でビジネスとして成り立っていそうなのは、4500円で過去のライブ映像を流した山下達郎くらいなんじゃないかしら。こないだ見た日経のセミナーで、渋谷陽一先生は「エンタメの未来はオンラインライブにしかない」と仰っていたけど、それは私の愛するシーンにも当てはまる予言なのだろうか。

音楽との向き合い方を模索の日々はまだまだ続く。