ドリーミー刑事のスモーキー事件簿

バナナレコードでバイトしたいサラリーマンが投げるmessage in a bottle

ミステリーサークルとbandcamp friday(東郷清丸とスカート)

美容院に行った先週末、後頭部に小さな穴を発見。いわゆる円形脱毛というやつ。思いあたる原因はコロナ以降の不条理な不遇しかない。俺は毛根までふがいないのか。しばし呆然。


5/7のbandcamp friday で入手した東郷清丸の新曲集『GOLDEN SONGS WEEK ‘21』は、まるでこの頭と心にポッカリと空いたミステリーサークルの円周を丹念になぞったような作品集のように思えてならない。中でも「おつかれサムデイ」という曲の歌詞は、「俺のことをどっかで見てたのか…?」とドキッとする歌詞だった。


“あんた辞めたんじゃなかったっけ その仕事

知らないふりをするだけの その仕事

あんた辞めたんじゃなかったっけ その仕事

言葉尻をつかむだけの その仕事

やりがいはなくてもなんとかやれるが

生きがいがないままではだいぶ厳しい”


そういえば街を見回しても、去年の今頃には充満していた「この苦境をみんなで乗り越えようぜ」という共助の熱気もさすがに息切れて、諦念がガランと転がっているようである。この9曲16分、声とギターだけのシンプルな作品集は、その広い余白の中に2021年5月のリアルな空気がたっぷりと含まれている。こんな時もあったな…といつか思い出すために、今のうち存分に吸い込んでおくべき作品のように思う。


そして同じくbandcamp friday で手に入れたのがスカートの『続・在宅・月光密造の夜Vol.1』。

これは東郷清丸が広げていった心の空洞に、濃厚な感情の激流をドバドバッと流し込んでいく、ある意味で対照的な性格のライブ盤である。この2枚を運転中に続けて聴くというのはある種の「体験」と言ってもいいのではないか。なんせ一曲目から「CALL」「静かな夜がいい」「どうしてこんなに晴れているのに」「すみか」とスーパーリリカルな名曲がたたき込まれていくのである。しかも2021年春と言えばアルバム『CALL』発売から5周年。私がスカートの存在を知って初めてリリースされた作品である。ノスタルジーは僕の敵、ということはいつも肝に銘じているつもりだけど、あのスカートを始めとする(私にとっては)新しい音楽に毎日出会っていたワクワクした日々を思い出すと、どうしようもなく感傷的な気持ちになってしまう。でも自助・共助の後に続く何かが見えない今だもの。もうそれくらい許してくれてもいいじゃないですか。俺にだって放流したい感情がたくさんあるんだよ…とかき鳴らされるフェンダーに、マイハートを重ねてしまった。それにしても澤部さんのかたわらで無機質、不器用に鳴る古いリズムボックスが、こんなにも優しい相棒のように思われたのはなぜだろう。