ドリーミー刑事のスモーキー事件簿

バナナレコードでバイトしたいサラリーマンが投げるmessage in a bottle

ゴールデンウィーク後半のこと

5/4

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今日から実家に帰省。

ジジババ様に子供を預けて都心に繰り出す。ちょうどこの日は自由が丘と下北沢で参加したいイベントがあったのだけれども、野生の勘で自由が丘で開催されたErection block partyへ。

雑居ビルに囲まれたコインパーキングでパーティーを楽しむ解放感(と若干の背徳感)がなんとも言えない気持ち良さ。そしてそれ以上に最高だったのがチャージフリーで観てしまうには豪華すぎるほどのミュージシャン、DJたち。

 


中でも岡村詩野さんのラジオ番組で紹介されて気になっていた、さとうもかのライブを初めて観れたのはとてもラッキーだった。入江陽に保護者のようにサポートされながらのライブは心配になるくらいにたどたどしく初々しいステージングなんだけど、それが逆にスタンダードな風格すら漂う楽曲や、みんなの耳を引きつける個性的な歌声を際立たせていたように思う。

 


しかしこの日のクライマックスなんと言っても日がすっかり暮れてから登場したVIDEOTAPEMUSIC。あの20世紀のリリカルな記憶をすべて封じ込めた映像が、都会の雑居ビルの壁一面に映し出されるのである。まるでアメリカ映画に出てくるドライブインシアターのように。これ以上にロマンチックな風景がこの世にあるなら教えてくれよと思ったし、集まった人たち含めてこの光景全体がもうアートだよね…と感極まった。主催してくれた人ありがとうございます。

 


所用のため最後の一曲『Fiction Romance』を背中で聴きながら会場を後にしたんだけど、自由が丘の駅でもまだあのピアニカが聴こえてきてて、なんかもう街全体が完璧だなと思いました。

 


胸いっぱいのまま自由が丘から浅草へ移動。リーファンデさんと再会の乾杯。リーさんの計らいでちょっと信じられないくらい楽しい時間を過ごしてしまった。

 

 

 

音楽が好きで良かったと思う一日。

 

 

 
リーファンデさん、ブログ始めました。

カゼノイチのライブを特別なものと思ってもらえていることがとても嬉しい。 

lee-mountains.hatenablog.com

 

 

5/5 

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帰省してるならついでに用事を一つ頼むわ、という社命により午前中は都内で仕事。

帰り道にエチオピアでカレー食べて渋谷ヒカリエへ箕輪麻紀子の展示を見に行く。

パステルな作品には不穏さを、ダークな作品にはユーモアを感じさせる箕輪さんの絵はいつまで眺めていてもまったく飽きることがない。頭の中にいろいろなストーリーが浮かんでくる。

ON READINGから我が家に連れて帰ってきた絵とセットになっていた作品(連作の半分側)も展示してあり、古い友人にあったような懐かしさとまとめて購入することのできなかった申し訳なさが去来した。

また名古屋でも個展を開く予定もあるとのことで今からとても楽しみである。

 

 

 

5/6

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連休最終日。GWとは終わったと思った瞬間に終わってしまうものなのである。最後の最後まで抵抗したい、と都心に向かう電車へ乗り込みまずは代々木公園で開催されていたRAINBOW PRIDE2018へ。

 


このお祭りの存在こそもちろん知っていたものの、参加するのは初めて。しかしこんなにも開放的で清々しいエネルギーに満ちた場所だったとは思わなかった。裏を返せばそれだけ日常の抑圧が大きいということなのかもしれないけど、誇らしげかつピースフルに渋谷の街を進んでいくパレードに手を振った瞬間にこみ上げるものがあった。社会なんて一人ひとりのマイノリティの集まりであるということを忘れずに生きていきたい。

 


そこから急いで移動した先は六本木ヒルズ

秒速で1億曲を書く男・澤部渡率いるスカートのライブを観に行くのである。

開始ギリギリに着くと会場は人でいっぱい。

ギロッポンでスカートなんて、そのギャップにやられてしまうんじゃないかと思っていたのだけれども、JーWAVE映えするナイスポップな名曲たちを並べたセットリストは、5月の風のような爽やかさで私たちの胸のど真ん中を吹き抜けていった。

スカートバンドでは初めて観る池上かなえさんのベースは清水さんよりもずっしりとロックな感じがした。次に登場するLucky Tapesの人が舞台袖でスカートに合わせてずっとエアドラムを叩いていてしまうも納得のグルーヴ。

 


終演後にいきものがかりの人と礼儀正しくトークする澤部氏を見ながら、長く伸びまくった物販の列に並ぶ。いよいよこのビルのどこかにあるテレビ朝日のスタジオで、タモさんとトークする日も近いのではないかという期待を抱きながら。

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さて、いよいよ連休も大詰め。

しかし家に着くまでが遠足だ。渋滞する高速の上でナイポレを家族全員で聴く。

5/8の清丸おにいさんのライブ、うまくいくといいな。 

 

 

 

 


以上が私のゴールデンウィークでした。

楽しかった。

ゴールデンウィーク前半のこと

4/27

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明日からGW。仕事帰りに大須ZOOでCEROの12インチ「WATERS」を駆け込み購入。

フォーマットにまったくこだわりのない私はいずれCD化される音源をアナログだからと買うことはほとんどないのだけれども、北山雅和氏が手がけたアートワークがあまりにもカッコ良かったので今回は辛抱がたまらなかった。ハイファイで理知的、それでいて濃厚なセクシーが揺らめくジャケットを抱えて帰宅。

早速ターンテーブルに載せてみたところ、音の粒子が四方八方に飛び散っていくような、サウンドにぶったまげる。バレアリック!

ceroのジャケットと言えば惣田紗希さんというイメージが強かったので、コーネリアス不動のパートナーである北山氏が手がけたことは意外だったのだけれども、この大いなる跳躍においては全てを新しくする必然があったのかもしれないなと思ったりした。

 

4/28 

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毎月(を目標に)開催しているパーティー「KENNEDY!!!」を共に主催している二宮さんが、カゼノイチにてミナクマリ&清水ひろたか、YOK.という豪華なライブを開催。私もアフターパーティーのDJとしてお邪魔させて頂いた。

しかしプロのミュージシャンのライブでDJをするということ自体が初めてである上に、出演者の中に「あの」清水ひろたか氏(その偉大な経歴をここでは書ききれないのでご存知ない方はぜひともググって頂きたい)がいらっしゃるということで、お話を頂いた瞬間は謹んで辞退申し上げようと思ったほど。当日も大変にビビりながら会場着。

 
YOK.さんのその場で自分の歌とギターをサンプリングして、一人とは思えないほど深く広い世界を作りあげていく見事な手際と、即興でKENNEDY!!!の一員であるMC P.I.Gのラップとセッションしてしまう素晴らしい反射神経。そして以前よりもポップ感を増したミナクマリさんの歌声に触れるにつけ、やはり俺は出しゃばるべきではなかった…と後悔が去来する(器の小ささよ)。

しかしそんな逡巡は、清水ひろたか氏のギターが鳴り響いた瞬間の「こんな音聴いたことない…」と身震いするほどの感動に比べれば一粒の砂糖よりも小さいものではないかと開き直り、ライブの余韻を壊さないことだけを心がけて選曲させてもらった。

俺にはまだまだまだ聴くべき音楽があることを知る機会を与えてくれた二宮さんに深く感謝したい。

 

 

 

4/29

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くらがりサウンドフェスという山の中で行われるイベントに娘二人と。地域振興を兼ねたイベントのためか、入場料500円、子供はフリーというありがたみプライス。

初めて観るメインアクトのGOMA MEETS AFRAは、あまりにもすごすぎて途中ですごさを忘れてしまうレベルでただ口を開けて観るほかなかった。そして先月私が主催したSons of Nice Songsのフライヤーを置いて下さった岡崎Pocketの店主・URAさんのDJもとても良かった。D.A.NからのSADEという流れにハッとさせられた。

ライブの合間には会場近くの渓流で遊び、案の定娘が思いっきり水に落ちるなどして親子共々最高にエンジョイさせて頂きました。

 


4/30

子供の宿題とローラースケートの練習に明け暮れる。

 


5/1

同上

 


5/2

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娘たちが学校に行っているすきにON READINGで始まった宮崎信恵(STOMACHACHE. )の個展に。STOMACHACHE.のイラストはまさに今日もTシャツ着てるくらい大好きなんですが、「最高にセンスのいい絵」という以上の知識はなかった。

しかし、今回発表された宮崎さんの絵本のイラストとキャプションからはむしろ内的な繊細さや葛藤、現実とのストラグルが伝わってきて強く心を揺さぶられた。

特にドローイングの中にコラージュされた写真(転写?)は、絵本の世界と現実の世界を繋ぐ窓のようにも感じられ、主人公が私たちと隣合わせの世界を生きていることが伝わってきたし、手法としての引用の重要性という意味において俺が愛してやまない90年代以降のポップミュージックとの親和性を感じて嬉しくなってしまった。

 

 

 

サニーデイ ・サービス『the CITY』の入口に立ち尽くすわたしの話

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サニーデイ・サービスの中で一番好きなアルバムは?と尋ねられたなら、間違いなく『Popcorn Ballads』と即答する私。

 


コンセプトから楽曲のクオリティ、アートワークやリリース形態に至るまで、とにかくぶっちぎりだった。

この作品が生まれた瞬間に生きていることが幸運だったと言いたくなるほどの歴史的傑作だったと思っている。

 


そんなポップコーン原理主義者の私から見た最新作『the CITY』を一言で表わすならば、「『Popcorn Ballads』の世界観をさらに掘り下げ、血肉化させた作品」ということになると思う。

 

しかしその話をする前に、古くからのファンとして触れておかなければならないのは、彼らは22年前にも、同じタイトル(と言ってもいいはず)のアルバムをリリースしている、という点。

そう、それは言わずと知れたサニーデイ・サービスを代表する、「その街」を描いた名盤『東京』のことであります。

 
あの美しきモラトリアムの結晶のような作品と、その20年後に生み落とされた『the CITY』という異形の音楽のギャップ。

タイトルトラックの『東京』『恋に落ちたら』で始まる柔らかな世界が、「Fuck you」の連呼で始まる『ラブソング2』、狂気と諦観に満ちた『ジーン・セバーグ』『Tokyo Sick』で幕を開ける果てしない深淵へ変貌した理由は何なのか。

 


その問いについて考えることが、この『the CITY』という作品に接する上ではとても重要なプロセスのような気がしている。

もちろんその答えは人によって異なるだろうけど、少なくとも私は、『the CITY』を2018年の現実に深くコミットした社会性を帯びた作品と捉えることに一つの解があると思っている。かつてのニューソウルの名盤たちのように。

  

それと同時に、『東京』という自らの偉大な遺産をある意味で放り出してでも、「今、この場所」にふさわしい音楽を鳴らすための冒険に挑まんとする、アーティストとしての巨大な勇気にも思いを馳せないわけにはいかない。

その試みはもはや業と呼ぶべき無謀なものだったのかもしれないけれども、少なくとも私にとっては見事な成功を収めたと言い切ることができる。

なぜなら、2018年に生きる俺の耳と心が欲しているのは圧倒的に『the CITY』だから。

 

 

さて、1996年から2017年まで時計の針を一気に回し、名盤『POPCORN BALLADS 』から見た『the CITY』について感じたことを書いてみたい。

 


まず、この二作に共通するもの。

それはフォーク、ロックンロールからヒップホップ、ノイズまで、多様なジャンルの楽曲が並んでいるにも関わらず、それらが一つの作品としてパッケージされることの必然を感じさせることだろう。

 
例えば『the CITY』で言えば、『甲州街道の十二月』で美しいメロディの虹をかけた直後に、性急なブレイクビーツの上でMC松島が若者の刹那をまくし立てる『23時59分』への鮮やかな転換。

あるいは中原昌也のリミックスによる『すべての若き動物たち』で得体の知れない不穏さがクライマックスを迎えた後に訪れる、『完全な夜の作り方』の暖炉のような安らぎ。

 
こうした目まぐるしく、大胆な展開の中にも、どこか共通した緊張感、あるいは対比によるコントラストの強調があり、映画のような大きなストーリーが紡がれていく。

これはきっと、このサブスクリプション・プレイリスト時代において、「アルバムというフォーマットの芸術的意味」と「60分以上にわたってリスナーの耳を奪いつつけるエンターテイメント性」ということを追求したからからこその到達点なんだろう、と素人ながら推察し、勝手にシビれてます。

 

 

 

一方、『Popcorn』に無くて『the CITY』にあるもの。

それを端的に言うならば、「よりリアルで、よりパーソナルな狂気と喜び」ではないか。

 
ボーダーレスかつタイムレス、まるで超大作のSF小説のような手ごたえだった『POPCORN BALLADS』に対し、『the CITY』の世界は、聴き手である私たちの近くに確かに実在している。 


その具体的な理由を示すのは難しいのだけれども、例えば『甲州街道…』『Tokyo Sick』といった地理的な設定であったり、主人公の極私的なつぶやきのような『イン・ザ・サン・アゲイン』や『雨はやんだ』の歌詞、あるいは『Popcorn…』に比べると全体的に湿度の高いメロディやリズム。

そうしたものの総体が、人々の営みや息づかいを感じさせるのだと思います。

 

このように、アルバム全体を通した大きなストーリーを感じさせつつ、各曲の描写の解像度を上げることで、『the CITY』という街の外形だけではなく、そこに張り巡らされた細い路地や、その奥にある小さな窓一つひとつの中で繰り広げられるドラマが頭の中で再生されていくような感覚に包まれるのです。

 


そして本作の特徴として挙げられるのが、世代やキャリアやジャンルもバラバラなゲストミュージシャンが多数起用されている点ですが、これも都市のはらむ多様性や偶然性を反映した表れのように思う。


中でも、『My Lost City』『Obscure Ride』といった、都市に交錯する光と闇を描いた名作をリリースし続けているceroの高城晶平がフィーチャーされていることは必然のように思えるし、健康上の理由により叶わなかったECD(彼もまた東京のリアルを体現した人物である)とのコラボレーションが実現していたら…と悔やまずにはいられない。

(アナログ盤のジャケットにシティポップの裏番長・関美彦氏がコメントを寄せているのもとても象徴的だと思う) 

 

そしてこの多数のゲスト参加という点はもちろん、バンドやメロディ、リズムという枠にとらわれない奔放なサウンドプロダクションからは、都市というものが拡張、変化するのと同様に、一貫して街の光景を捉えてきたサニーデイ・サービスというバンドもまた変化していく、変化しなければならない。そんな丸山晴茂不在の中で至った、新しい決意と地平を感じるのです。

 

 

さて、例によって長々と『the CITY』について書いてしまった。通常、これだけの字数を費やすと、なんとなく自分なりの結論のようなものに到達した気になるのだけれど、この作品についてはそういう手ごたえがまったくない。言葉を並べれば並べるほど、なにもわかっちゃいないな…という思いが募る一方なのである。

 

そんな私が今の時点で言える確かなことは、これから先、フィジカルを手にする、ライブを観る、誰かと会話をする。その度に新たになにかを発見する。

そうやってずっと向き合っていく作品になるだろう、ということだけなのです。

 

 

【ご報告】Sons of Nice Songs Vol.1を開催しました!

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ご報告が遅くなりましたが、Sons of Nice Songs Vol.1大盛況のうちに終了しました!

 

それにしても、金曜も日曜も晴れなのに、イベント当日の土曜日だけ雨。
おまけに午前と午後にわりと強めの地震が起きたりして、「果たして本当にお客様は来てくれるかしら…。無事にイベントを開催できるのかしら…」と不安でしたが、蓋を開けて見れば当初の予定を上回る多くのお客様にお越し頂きました(はるばる東京からお越し頂いた方も!)。

 

さすがリーファンデと東郷清丸をチェックしているような皆さんはね、よくわかっていらっしゃるんですよ。
ロックンロールの神様は雨の日の小さなハコに降りてくるということを…。

 

トップバッターは東郷清丸さん。
昨年発表したデビュー作『2兆円』は読売新聞でも取り上げられるわ、アジカンのGotch氏主催の「Apple Vinegar Award」にノミネートされるわ、まさにシーンの台風の目である清丸氏。
この日はリズムマシンエレキギターを組み合わせたソロセットで出演してくれました。

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やけにコンパクトな黒いギターとトレードマークである赤いスウェットの組み合わせが、すでにただ者ではない雰囲気をビンビンに醸し出しており、否が応でも高まるお客さんの期待。

 

(彼が所属する)テンテイグループの『サンキスト』からスタートしたライブは、
あだち麗三郎、池上かなえという手練のミュージシャンと共に繰り出す稲妻のようなバンドサウンドとは対照的に、優しさと妖しさの境界線を自由にたゆたう歌とギターが最高に気持ちいい。

屋根裏部屋のような雰囲気のカゼノイチで聴く『Super Relax』につい昇天しかけましたが、主催者の責任感でなんとか地上に戻ってきました。


私を含め、多くの人がズッポリはまる東郷清丸の魅力の一つは、鳴らす音、放つ言葉の全てに、求心力と遠心力が同居しているところ、そのスリルにも似た快感にあるのではないかと思っています。

 

例えばアルバム『2兆円』の冒頭を飾る『ロードムービー』の

「目を覚ます頃には 着いてると思うから
寝ててもいいよ本当 毛布でもかけて」

という素直に読めば優しさ100%の歌詞も、彼の口から出た瞬間に、どこか微妙なねじれや、そこはかとない不安感を伴って響いてくる。

 

そうした彼だけが持つ触媒的魔術が最も端的に発揮されたのが、ツアーファイナルで共演するスカートの『静かな夜がいい』のカバー。

大人になりきれない純粋な主人公の姿が浮かぶ澤部渡氏の歌詞が、清丸氏が歌った瞬間に後戻りできないほど深い夢の中に連れていかれるような世界に生まれ変わっておりました。
原曲を聴いたことのある方はさぞ驚かれたのではないかと思います。

私も本番前のリハで聴いた時は、しばらくこれがスカートのカバーであることに気づかず、ついご本人に「完璧に自分の歌になってますね!」と伝えたところ、「ええ。『静かな夜がいい』ってタイトルにしようと思ってます」と言われたことをご報告しておきます。

 

そしてライブだからこそより鮮明に伝わる清丸氏のもう一つの魅力は、独特のリズム感というか、身体性のようなものだと思うんです。歌というか、発声そのものに、足腰に訴えてくるグルーヴがある。

 

特にこの日はバンドではなくリズムマシンが鳴らすチープで無機質なリズムがゆえに、逆に清丸氏の肉体に宿っている天性なファンクネスが際立って伝わってきたと思います。
おもちゃみたいなドラムマシンをフィーチャーしたスライ&ザ・ファミリーストーンの歴史的名盤『暴動』を思い出しました。

 

そうかと思えばパワーポップ戦隊主題歌とでもいうような『インサツレンジャー』、この日が初披露となった新曲『よこがおのうた』で、ふっと童心を差し出してみたりと、一体どんだけ引き出しあるのよこの人は…と底知れなさを堪能した1時間でありました。

 

来月また森道市場でライブが観れるのがめちゃくちゃ楽しみです。Never Ending Stageに全員集合してください!


そして我が盟友・二宮浩輔さん(4/28にカゼノイチでライブイベント主催します)の素晴らしいDJに続いては、R&B楽団Lee &Small Mountains率いるリーファンデさん!f:id:dreamy_policeman:20180420010726j:image


清丸さんとは対照的にギター一本で登場(ちなみにこの日のギターは曽我部恵一さんが使っていたものとのこと)。

ちょうど一年前の4月、ローズレコーズからリリースされた7インチ『Teleport City』を偶然手にして以来、その繊細にしてファンキーダイナマイトな魅力にヤラレっぱなしだった私。まさか一年後にこういうことになるとは夢にも思いませんでした。

 

一曲目はその7インチのB面に収録された名曲『山の中で踊りましょう』。
大切な人との間に生まれてしまった溝を乗り越えようする若者の成長譚のようなナンバー。

 

短いイントロの後、

「君はもうあの日 僕と一緒に目指した山はもう登らないわと一人降りていったね」

とリーさんが歌い出した瞬間に、もう鳥肌が立ち、涙腺が緩みましたよ…。

 

ライブを観るのはこれで三回目で、もちろん過去二回が素晴らしい歌だから今回お招きしたわけですが、あれこんなに凄かったっけ…と呆然としてしまうほど、全身からほとばしるパッションが鮮烈でした。そう、それこそ曽我部恵一氏と肩を並べるような…。


東郷清丸さんが片時も目が離せない変幻自在の魔球を投げるピッチャーだとすれば、リーさんの投げる球は聴き手のハートのど真ん中に飛び込む160キロのストレート。

そう書いてしまうと、なにやら単純で暑苦しいなものように聞こえてしまうかもしれないのだけれども、私のようなヘンクツおじさんの心にも深く刺さるのは、やはりそこに重層的な魅力があるから。

 

清涼感のある、時に小さな子供が叫んでいるようにすら聞こえるほどにイノセントな歌声。
そして切なさの中にもどこかユーモアを感じさせるソングライティングと、ギター一本の歌の向こう側にバンドの音を感じさせる豊かなグルーヴ。


こうした要素すべてが重なりあった瞬間、カゼノイチにいるみんなのハートに火がついたのを俺は見逃さなかったぜ…。

 

そしてこの日わかったことがもう一つ。
それは彼が歌の中に多くの政治的なダブルミーニングを潜ませているということ。


その内容はもしかするとデリケートなことかもしれないので具体的には書かないけど、国境をまたぐ困難を引き受けた上でなお、「わかりあう」「好きになる」と歌う彼の強さ。

「38度のあつい熱さまして

あの川渡って 君が住む南の街まで
そこで同じテーブルの上で
新しい時代さ Sweet Soulで幕開けさ」

という『山の中で踊りましょう』の歌詞の意味を知った時の衝撃と感動よ。


俺はずっとこの人のことを佐野元春忌野清志郎の間に生まれたソングライターだと思っていたのだけれど、音楽面だけではなく、社会的メッセージをビシッと織り込むという点でも通じるものがあったのかもしれない。

 

そして「どうしても今日歌いたいんです」と泣かせるセリフの後に披露してくれたたくさん新曲も素晴らしかった。前作『カーテンナイツ』に比べると、ロックンロールの香りが強くなった印象で、新たな旅の予感に胸が躍りました。


さて、熱くて、優しくて、なにより最高に楽しいライブは夜の安城を疾走するような『Teleport City』で終了。

…と思いきや、お客さんからの拍手は鳴り止まず、まさかのアンコール『しようよ』で大団円。しびれました。


ライブ後はアフターパーティー。
最高のバックビートをスピンして下さったのは西三河の文化的灯台バナナレコード岡崎店店長のDJ真木朗さん。
このブログの副題が少しだけ叶ったような気がして感無量でした。

 

というわけで、風雨にも負けずにお越しくださった皆様、素晴らしいライブを披露して下さったリーファンデさん、東郷清丸さん、親身にサポートしてくれたカゼノイチをはじめ応援してくださった友人、レコードショップ、ライブハウスの皆さん、本当にありがとうございました。


またお会いしましょう!

 

東京からお越し頂いた方のブログです。

東郷清丸に関する学術論文のような重厚さ。ぜひご一読を!

slglssss.hatenadiary.jp

 

積年の決着をつけるために坂口恭平を観に行った件

 

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高学歴かつ男前。

本を出したり絵を描いたりCD出したり総理大臣になったり。

天から与えられた二物三物を闇雲に振り回し続けている坂口恭平という人には、一物にも恵まれなかった同い年の人間として、(図々しくも)若干の嫉妬と、(失礼ながらも)いささかなの胡散臭さを感じながら、興味深く、かつ遠巻きに眺めていた。

 


しかしある時、ワタリウム美術館で初めて彼の絵を目にした瞬間、ざわっと鳥肌が立つ感覚に襲われ、やっぱこの人は天賦の才に恵まれすぎた人なのかもしれないと思い、ますますこの謎めいたキャラクターに興味がわいてしまったのです。

 


よって今回はライブを観ると言うよりは「坂口恭平とは何者か」ということを確かめてやるぜ、という謎の意気込みで会場の金山ブラジルコーヒーに向かった。

 
入店前にSNS用の写真を撮影しようとスマホを看板に向けてシャッターボタンを押した瞬間、「ワッ!!」という大きな声と共に誰かに背中を押された。

 

写真がブレてしまったことと、いい年してインスタ映えを狙った写真を撮る姿を見られた恥ずかしさから、若干のいら立ちを覚えながら後ろを振り返ると、そこには知り合いでもなんでもない、坂口恭平本人の邪気のない笑顔が。

 
「今日、満員だけど大丈夫?入れる?」と彼は長年の友人ような口調で聞いてきたのでつい、「ああ、俺は予約してるから大丈夫」とタメ口で答えるワタシ。普段から敬語と警戒心を解かないドリ刑事なのに…。

 
他愛もないイタズラと言ってしまえばそれまでなんだけど、こちらの肩の力を見透かしたような自由な振る舞いに、のっけからものすごく濃厚な坂口恭平感を食らったような気分だった。

 

そんなハプニングを経て始まったライブは、これまたある意味で期待を裏切らない、未だ体験したことのない時間となった。


この日は喉の調子が悪かったようで、冒頭に本人が「今なら返金するよ」というくらいにガラガラの声。プロの歌という意味ではまったく不合格である。


しかしその崩れ落ちそうな歌たちを支えるのが、寺尾紗穂、厚海義朗(from GUIRO)、菅沼雄太という腕利きミュージシャンたち。

声の調子に合わせて、その場でどんどん変えていくセットリストに対応しながら、彼が天真爛漫に振る舞える土台をがっちり作り上げ、会場の熱をグングン上昇させていく。

特に初めて観る寺尾紗穂の歌とピアノはやんちゃな孫悟空を見守る三蔵法師の如き慈悲深さで、今までライブを見逃し続けていたことを深く悔やむほどだった。

 
そんな仲間の努力を知ってか知らずか、MCになるとハイテンションで喋り続けてしまう坂口氏。

早口すぎて半分くらいは聞き取れなかったんだけど、現実と想像、本当と嘘という厚くて高い壁を軽々と越えていく話が次から次へと湧き出てくる(内容は差し障りがあるので書けない)。

 
それを妄想と切り捨ててしまうことは簡単なんだけれども、果たしてそれでいいのだろうか。現実の本当の世界に生きている(と信じている)俺の常識が果たして絶対と言い切れるだろうか。

 
そう、ボーカリストの声が出てないからって歌が歌えないわけじゃない。演奏し始めた曲を途中でやめたってかまわないし、勝手に新しい政府やゼロ円ハウスを作ったっていい。

 
お前の定規ですべてを測れると思うなよ。

 
そんなことを教えられた夜だった。

 


さて、いよいよ開催まで約1週間!

まだ残席があるのが世界七不思議の一つと言われる最高なイベントです!!終演後のアフターパーティも(チャージフリー)合わせてぜひ遊びに来てください!

 


-Sons of Nice Song vol.1 -

日時:4/14(土) Open18:30 Start 19:00

出演:リーファンデ(Lee&Small Mountains)、東郷清丸

DJ:二宮浩輔(KENNEDY!!!)、真木朗(バナナレコード岡崎)

 


会場:Book cafe & bar カゼノイチ

料金:予約2000円 当日2200円 学割1500円

(いずれも+1ドリンク)

ご予約は以下のホームページまたはメール、twitterからお願いします。

予約用web https://reserva.be/dreamy1

メール dreamycop2010@gmail.com

twitter.com

3/23 ミツメ「Tour Esper2018」 @伏見JAMMIN'

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長い長い刑期が満了し、人間らしい生活にようやく復帰できました。
Life is comin’ back.

そして

Spring has come.
待ってたぜ…。

 

さて、シャバに出て何を一番やりたいか。
飲酒、爆睡、爆食。。。
思いつくことはいろいろあるわけですが、私の場合はやはりライブ。

ちょうどミツメのワンマンが開催されるということで、堂々と定時で会社を後にして向かったのは伏見Jammin’
去年、orga your assholeとVIDEOTAPEMUSICのライブを観たところですね。

 

開演ギリギリに滑り込むと、思いのほか男性率が高い。
しかもみんなシュッとしててミツメ感のある髪形だ。前髪がないのは俺だけ…と若干の疎外感を覚えたところでDruutti Column『Sketch for Summer』と共にミツメ登場。

 

彼らのライブを観るのはなんと去年の5月以来。
でも川辺素君の髪は今日もツヤツヤだし、メンバーみんな猫背だし、相変わらずのミツメでとても安心した。

 

しかし、「コース」から始まったこの夜のパフォーマンスは、相変わらずのミツメではなかった。

ボーカルはより伸びやかに、ギターはより立体的に、そしてリズムは安定感を増している。
可動域、解像度、処理速度、バンドとしてのスペックがぐっとアップデートされたように感じたのです。

例えるなら、アナログ放送がデジタル放送に、ハイビジョンが4Kになった感じとでも言えばわかって頂けるでしょうか。

え。わからない?

では、あの川辺氏のMCがいつもの十倍くらいの文字数だったと言えば、その自信と充実の程が伝わるのでは。

 


今回のツアーはシングル『エスパー』のリリースに合わせたものなので、過去曲もたくさん。というか、まさに春のミツメ祭りというべきヒットパレードなセットリスト。
特に一番好きな「Fly me to the mars」を聴くことができて感無量だった。

 

そして中盤に披露されたまだタイトルのない二つの新曲。
一方はどこかボサノバなそよ風を感じるリズムとメロディが、そしてもう一曲は(ミツメにしては)ハードなブレイクビーツ感が印象的な曲で、来る新作が楽しみになった。

 

しかしこの日の白眉はなんといってもツアータイトルに冠された『エスパー』。
あのキラッと揺らめくイントロが鳴った瞬間に、身体と心をイナズマに貫かれたような感覚は一体なんと呼べばいいのか。
まだ出たばかりの曲なのに、ずっと昔から聴いているような、まさにESPを内包した名曲だなぁと改めて感じました。


さて、ざばーっとミツメの歴史を駆け抜けた約2時間。
私にとってミツメというバンドの魅力を一言で表すならば、「まだ誰も聴いたことのない、でも誰の心にも引っかかるポップソングを探求し続けている姿勢」にあるのではないか。
そんなことを考えながら、春風吹く名古屋を後にした次第。

 


さて、ミツメもいいけどこちらも最高!というわけで宣伝です。
ワタシが人生をかけて企画したイベントです。終演後は最高のDJをお招きしてアフターパーティを開催します(チャージフリー)。
ぜひ遊びに来てください!

 

-Sons of Nice Song vol.1 -
日時:4/14(土) Open18:30 Start 19:00
出演:リーファンデ(Lee&Small Mountains)、東郷清丸
DJ:二宮浩輔(KENNEDY!!!)、真木朗(バナナレコード岡崎)

会場:Book cafe & bar カゼノイチ
料金:予約2000円 当日2200円 学割1500円
(いずれも+1ドリンク)
ご予約は以下のホームページまたはメール、twitterからお願いします。
予約用web https://reserva.be/dreamy1
メール dreamycop2010@gmail.com
twitter

twitter.com

 

リーファンデ、その青き炎の温度について

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出張のため新幹線に乗っています。
たしか一昨日も先週も乗ってたと思うんですけどね…。

 

自らの業務量の最適化(怠ける、サボるとも言う)にかけては右に出る者なしを自負する私ですが、この年度末ショックに伴うブラックな荒波から逃れることはできなかった。
行きたいライブも我慢して、女房子供もほったらかしで、朝から晩まで平日も週末も泣きながら働いております。

 

そんな日々の中で、通勤BGMにはソウルとかジャズとかファンクとか、ブラックミュージックのリズムを欲することが多い。

やはりそのルーツが過酷な労働に遡るから、なんでしょうか。

 

そして気がつけば、リーファンデさんと東郷清丸さんをお迎えしてお送りするイベント「Sons of Nice Songs Vol.1」まであと1ヶ月となりました。

 

というわけで今回は、若きソウルボーイ・リーファンデ(Lee & Small Mountains)がいかに素晴らしいシンガーソングライターかということをお伝えしたい。

 


そもそも私がイベントを企画しようと思ったのは、去年の11月、下北沢でリーさんのライブを観たから、と言っても過言ではない。

昨年1月にリリースされた超名盤『カーテンナイツ』の熱量はそのままに、みずみずしい情景が鮮やかに広がっていく歌を聴いて、「これはもっと多くの人に聴いてもらわなければならないヤツだ…」と勝手に昂ぶって、その場でオファーしてしまったのです。

なんというか、聴く者の一番熱くて最も繊細な部分に、ダイレクトに触れてきて、何かをかきたてる力があるのですよ、彼の歌には。


例えばこんな歌。

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一人の若者が世界に向き合う時に生まれる、かぎりなく青い緊張感。
些細なことに傷ついたり、迷ったりしながら、それでも前に進もうとする決意。
そういうものを、さりげない言葉で綴られた歌詞や、力強いメロディーから感じるのです。

そりゃ傍らで見つめる曽我部恵一さんも思わず「いい感じだね」とつぶやいちゃいますよ…。

 

そして曽我部恵一と言えばこの動画も。
「カーテンナイツ」の監修(プロデュースではなく)を務めた曽我部氏からのアドバイスを聞くリー青年のチャーミングな佇まいよ。

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リーファンデさんの音楽を「〇〇を好きな人にオススメ!」みたいな言い方もできるんだけど、できればそういう言い方はしたくない。
なぜなら、〇〇が好きな人にも、××が好きな人にも、△△が好きな人にも聴いてもらいたいし、聴いたら絶対に好きになってもらえると思うから。

 

そういう歌なんです。
4月14日、ぜひ聴きにきてください。

 

 


-Sons of Nice Song vol.1 -
日時:4/14(土) Open18:30 Start 19:00
出演:リーファンデ(Lee&Small Mountains)、東郷清丸
会場:Book cafe & bar カゼノイチ
料金:予約2000円 当日2200円 学割1500円
(いずれも+1ドリンク)

ご予約は以下のホームページまたはメール、twitterからお願いします。

予約用web https://reserva.be/dreamy1
メール dreamycop2010@gmail.com

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