ご報告が遅くなりましたが、Sons of Nice Songs Vol.1大盛況のうちに終了しました!
それにしても、金曜も日曜も晴れなのに、イベント当日の土曜日だけ雨。
おまけに午前と午後にわりと強めの地震が起きたりして、「果たして本当にお客様は来てくれるかしら…。無事にイベントを開催できるのかしら…」と不安でしたが、蓋を開けて見れば当初の予定を上回る多くのお客様にお越し頂きました(はるばる東京からお越し頂いた方も!)。
さすがリーファンデと東郷清丸をチェックしているような皆さんはね、よくわかっていらっしゃるんですよ。
ロックンロールの神様は雨の日の小さなハコに降りてくるということを…。
トップバッターは東郷清丸さん。
昨年発表したデビュー作『2兆円』は読売新聞でも取り上げられるわ、アジカンのGotch氏主催の「Apple Vinegar Award」にノミネートされるわ、まさにシーンの台風の目である清丸氏。
この日はリズムマシンとエレキギターを組み合わせたソロセットで出演してくれました。
やけにコンパクトな黒いギターとトレードマークである赤いスウェットの組み合わせが、すでにただ者ではない雰囲気をビンビンに醸し出しており、否が応でも高まるお客さんの期待。
(彼が所属する)テンテイグループの『サンキスト』からスタートしたライブは、
あだち麗三郎、池上かなえという手練のミュージシャンと共に繰り出す稲妻のようなバンドサウンドとは対照的に、優しさと妖しさの境界線を自由にたゆたう歌とギターが最高に気持ちいい。
屋根裏部屋のような雰囲気のカゼノイチで聴く『Super Relax』につい昇天しかけましたが、主催者の責任感でなんとか地上に戻ってきました。
私を含め、多くの人がズッポリはまる東郷清丸の魅力の一つは、鳴らす音、放つ言葉の全てに、求心力と遠心力が同居しているところ、そのスリルにも似た快感にあるのではないかと思っています。
例えばアルバム『2兆円』の冒頭を飾る『ロードムービー』の
「目を覚ます頃には 着いてると思うから
寝ててもいいよ本当 毛布でもかけて」
という素直に読めば優しさ100%の歌詞も、彼の口から出た瞬間に、どこか微妙なねじれや、そこはかとない不安感を伴って響いてくる。
そうした彼だけが持つ触媒的魔術が最も端的に発揮されたのが、ツアーファイナルで共演するスカートの『静かな夜がいい』のカバー。
大人になりきれない純粋な主人公の姿が浮かぶ澤部渡氏の歌詞が、清丸氏が歌った瞬間に後戻りできないほど深い夢の中に連れていかれるような世界に生まれ変わっておりました。
原曲を聴いたことのある方はさぞ驚かれたのではないかと思います。
私も本番前のリハで聴いた時は、しばらくこれがスカートのカバーであることに気づかず、ついご本人に「完璧に自分の歌になってますね!」と伝えたところ、「ええ。『静かな夜がいい』ってタイトルにしようと思ってます」と言われたことをご報告しておきます。
そしてライブだからこそより鮮明に伝わる清丸氏のもう一つの魅力は、独特のリズム感というか、身体性のようなものだと思うんです。歌というか、発声そのものに、足腰に訴えてくるグルーヴがある。
特にこの日はバンドではなくリズムマシンが鳴らすチープで無機質なリズムがゆえに、逆に清丸氏の肉体に宿っている天性なファンクネスが際立って伝わってきたと思います。
おもちゃみたいなドラムマシンをフィーチャーしたスライ&ザ・ファミリーストーンの歴史的名盤『暴動』を思い出しました。
そうかと思えばパワーポップ戦隊主題歌とでもいうような『インサツレンジャー』、この日が初披露となった新曲『よこがおのうた』で、ふっと童心を差し出してみたりと、一体どんだけ引き出しあるのよこの人は…と底知れなさを堪能した1時間でありました。
来月また森道市場でライブが観れるのがめちゃくちゃ楽しみです。Never Ending Stageに全員集合してください!
そして我が盟友・二宮浩輔さん(4/28にカゼノイチでライブイベント主催します)の素晴らしいDJに続いては、R&B楽団Lee &Small Mountains率いるリーファンデさん!
清丸さんとは対照的にギター一本で登場(ちなみにこの日のギターは曽我部恵一さんが使っていたものとのこと)。
ちょうど一年前の4月、ローズレコーズからリリースされた7インチ『Teleport City』を偶然手にして以来、その繊細にしてファンキーダイナマイトな魅力にヤラレっぱなしだった私。まさか一年後にこういうことになるとは夢にも思いませんでした。
一曲目はその7インチのB面に収録された名曲『山の中で踊りましょう』。
大切な人との間に生まれてしまった溝を乗り越えようする若者の成長譚のようなナンバー。
短いイントロの後、
「君はもうあの日 僕と一緒に目指した山はもう登らないわと一人降りていったね」
とリーさんが歌い出した瞬間に、もう鳥肌が立ち、涙腺が緩みましたよ…。
ライブを観るのはこれで三回目で、もちろん過去二回が素晴らしい歌だから今回お招きしたわけですが、あれこんなに凄かったっけ…と呆然としてしまうほど、全身からほとばしるパッションが鮮烈でした。そう、それこそ曽我部恵一氏と肩を並べるような…。
東郷清丸さんが片時も目が離せない変幻自在の魔球を投げるピッチャーだとすれば、リーさんの投げる球は聴き手のハートのど真ん中に飛び込む160キロのストレート。
そう書いてしまうと、なにやら単純で暑苦しいなものように聞こえてしまうかもしれないのだけれども、私のようなヘンクツおじさんの心にも深く刺さるのは、やはりそこに重層的な魅力があるから。
清涼感のある、時に小さな子供が叫んでいるようにすら聞こえるほどにイノセントな歌声。
そして切なさの中にもどこかユーモアを感じさせるソングライティングと、ギター一本の歌の向こう側にバンドの音を感じさせる豊かなグルーヴ。
こうした要素すべてが重なりあった瞬間、カゼノイチにいるみんなのハートに火がついたのを俺は見逃さなかったぜ…。
そしてこの日わかったことがもう一つ。
それは彼が歌の中に多くの政治的なダブルミーニングを潜ませているということ。
その内容はもしかするとデリケートなことかもしれないので具体的には書かないけど、国境をまたぐ困難を引き受けた上でなお、「わかりあう」「好きになる」と歌う彼の強さ。
「38度のあつい熱さまして
あの川渡って 君が住む南の街まで
そこで同じテーブルの上で
新しい時代さ Sweet Soulで幕開けさ」
という『山の中で踊りましょう』の歌詞の意味を知った時の衝撃と感動よ。
俺はずっとこの人のことを佐野元春と忌野清志郎の間に生まれたソングライターだと思っていたのだけれど、音楽面だけではなく、社会的メッセージをビシッと織り込むという点でも通じるものがあったのかもしれない。
そして「どうしても今日歌いたいんです」と泣かせるセリフの後に披露してくれたたくさん新曲も素晴らしかった。前作『カーテンナイツ』に比べると、ロックンロールの香りが強くなった印象で、新たな旅の予感に胸が躍りました。
さて、熱くて、優しくて、なにより最高に楽しいライブは夜の安城を疾走するような『Teleport City』で終了。
…と思いきや、お客さんからの拍手は鳴り止まず、まさかのアンコール『しようよ』で大団円。しびれました。
ライブ後はアフターパーティー。
最高のバックビートをスピンして下さったのは西三河の文化的灯台バナナレコード岡崎店店長のDJ真木朗さん。
このブログの副題が少しだけ叶ったような気がして感無量でした。
というわけで、風雨にも負けずにお越しくださった皆様、素晴らしいライブを披露して下さったリーファンデさん、東郷清丸さん、親身にサポートしてくれたカゼノイチをはじめ応援してくださった友人、レコードショップ、ライブハウスの皆さん、本当にありがとうございました。
またお会いしましょう!
東京からお越し頂いた方のブログです。
東郷清丸に関する学術論文のような重厚さ。ぜひご一読を!