ドリーミー刑事のスモーキー事件簿

バナナレコードでバイトしたいサラリーマンが投げるmessage in a bottle

台風クラブ、GUIRO 、曽我部恵一 SOCIAL TOWER MARKETに行ってきました

f:id:dreamy_policeman:20181018222240j:image

先週の土日、つまり10月13日、14日は愛知県地方はフリーフェスかぶり。

豊田市ではTOYOTA ROCK FESTIVALが、名古屋ではSocial Tower Marketが。

どちらも毎年すばらしい出演者と開放的な雰囲気で、とても楽しみにしているイベントなのです。

 
しかも我が家ときたら、土曜日は子供たちの学芸会、日曜日は長女の部活の大会ということで、本来なら両日とも涙を飲んで断念…というのが正しい親のあり方なんでしょう。

しかし台風クラブGUIRO曽我部恵一が出る日曜のソーシャルタワーだけは我慢できなかった。我慢できなかったんだよ俺たちは。というわけで、娘に(心の中で)土下座して(内緒で)テレビ塔へ。

 
トップバッターは台風クラブ

f:id:dreamy_policeman:20181018222341j:image

「朝はホンマに苦手で…」とボヤきつつ繰り出される珠玉のロックンロールナンバーは、前回観たよりもその大きさ、気圧、風速ともに発達しており、朝から集まった老若男女を猛烈な勢力で吹き飛ばしていた。とにかく演奏が太い、音がいい、MCもちゃんとしてる!と、言うことなしのライブ。たまらず屋台に駆け寄りビールを買ってしまう。

しかし、台風とはその威力を増すほどに、中心にぽっかり空いた目の静けさもまた際立つもの。

ダンスフロアの片隅から、夏のから騒ぎを俯瞰して、そのむなしさを責め立てるような石塚淳の言葉が、俺の革ジャンを貫いていく。

「計画はすぐ濁っていく 欲しがった心は本当か

まともになっていく歪み 消えてった淡い面影に」

という『相棒』の歌詞が、とりわけ40歳の胸にしみた秋晴れの空でした。

  

続いて登場するのはGUIRO

f:id:dreamy_policeman:20181018222416j:image

いや今ワタシ、「続いて登場するのはGUIRO 」としれっと書きましたけど、台風クラブGUIROというこの奇跡の投手リレー。ちょっと信じられません。

 
この日のGUIROは5人編成。ボーカル高倉一修、ベース厚海義朗、ギター牧野容也、ピアノ西尾賢、そしてドラムは不動のオリジナルメンバー松石ゲル…ではなくて光永渉。もちろん初めて観る編成である。

今年の夏仕様のGUIROにおける最大の見どころは、松石ゲルのドラムとシンセサイザー亀田暁彦のバチバチとしたせめぎ合いにあると思っていた。

その言いようのないスリルを手放して、新たな装いのGUIROが手に入れたもの。

それはまるでシルクのような滑らかさで、楽曲が本来持つ美しい世界観を再現する演奏力だったように思う。一曲目の『山猫』からラストの『アバウ』まで、身と心を歌の世界にゆったりと委ねてしまった。ceroの屋台骨を変幻自在のドラムで支える光永渉のスーパーテクニックは、高倉一修の歌に寄り添い、演奏の完成度を飛躍的に高めていたように思う。果たして今日の編成がパーマネントなものになるのかは知る由もないが、やはり片時も目を離すことができない有機体のようなバンド(という定義があてはまるかどうかもわからない)である。


ちなみに野外でGUIROを見るのは初めてだったので、10月とは思えぬ強い日差しにあの繊細そうな高倉さんが耐えられるのかしらと余計な心配をしておりましたが、むしろこれまでで最もリラックスしているように見受けられ、メンバーいじりも冴えわたっていた、ということを合わせて記録しておきます。

 


さて、大人の日曜日は忙しい。

いったん会場を離れ、名古屋市科学館へ移動。

浮世の付き合いで「大学共同利用機関シンポジウム」なるイベントを見学。

アルマ望遠鏡による宇宙探索、AIをつかった言語解析など、日本の最先端の研究成果を小田島等Tシャツを着て勉強させて頂きました。

ちゃんと基礎研究にも予算つけてよね!とパンダおじさんは主張しておきます。f:id:dreamy_policeman:20181018222443j:image

 


会場に戻り、トリの曽我部恵一に滑り込み。

f:id:dreamy_policeman:20181018222511j:image

一曲目の『恋におちたら』から、アコギ一本で会場中の観客の耳と目と心を奪ってしまう圧倒的な歌唱力と珠玉の楽曲たち。

しかしこの日のライブには、こうした音楽という枠ではくくることのできない、「今・ここのリアル」そのものを強くぶつけられているような感覚があった。

秋の空に吸い込まれていく『キラキラ』も、「そっちはどうだ?うまくやってるかい?」と語りかけてくる『青春狂走曲』も、日曜日の夕方に聴く「満員電車は走る」「魔法のバスに乗って」の切実さも、まるで親しい友人からの手紙のように響き、演者と聴衆という役割分担をすっかり意味をなさないものにしていった。

 
そして歌というフィクションがリアルを乗り越えれば、偶然もまた必然を侵食する。

魂を吐き出すようなシャウトと、それによって枯れてしまった歌声。

晴茂君の不在に触れつつもつとめて明るくふるまっているようなMCとは対照的な『セツナ』の絶唱と切れてしまったアコギの弦。

 

こうしたアクシデントたちに、曽我部恵一サニーデイ ・サービスの現在が表れているように感じてしまうのは、考えすぎという名の私の悪癖であるのだけれども、ついそう思わせる全身芸術家感を曽我部恵一が背負っていることは、まぎれもない事実だと思うのです。

 

 
というわけで今年が最後かもしれないというSOCIAL TOWER MARKET。

思えば小田島等さんのライブペインティングにはじまり、ミツメ、ネバヤン、王舟などなど毎年、たくさんの刺激を頂きました。

またの開催を心より願っております。

 

さて、ソーシャルタワーにも負けないイベントになること間違いなしのイベントSons of Nice Songs Vol.2、ご予約お待ちしております! 

 

-Sons of Nice Songs Vol.2-

日時:12/15(土)14:00開演

会場:K.Dハポン鶴舞

出演:関美彦、さとうもか

料金:前売2000円+1D(中学生以下無料)

予約web:https://reserva.be/dreamy1



f:id:dreamy_policeman:20181018230258j:image

Dreaming Day Vol.7に行ってきました。

f:id:dreamy_policeman:20181009201756p:image

久々の更新です。

 
細田瑞樹さんという若きミュージシャンが主催、自ら出演しているイベント「Dreaming Day vol.7」に行ってきました。

この日でちょうどイベント開始から一周年とのことでしたが、1年で7回ということは、2ヶ月に一回以上のペースで開催ってことじゃないすか。いや頭が下がります…。

 


さて、イベントのトップバッターはその細田“ヤングライオン”瑞樹が弾き語りで登場。

若干26歳とは思えないメジャーセブンス系のコードを多用した色彩豊かな楽曲に、若者らしい骨太で熱を帯びたボーカルという組み合わせ。これは若き日の鈴木茂あるいは(スタカン時代の)ポール・ウェラーの遺伝子か。

これはきっとバンドでやったらもっと素晴らしいだろうな…と思っていたところに、この日のトリであるThree Sunshineの浅野紘子がフルートでゲスト参加。

その組み合わせが実に素晴らしく、たった1音が加わるだけで楽曲の持つ世界がパカーンと広がったようであった。

 


続いて登場はtroeppa。

名古屋インディーの実力者4人による新バンド。今日が3回目のライブとのことだったのだけれども、バンドとしての佇まいがすでにずるい。キーボードの鈴村まどかを右手に、ギター、ベース、スタンディングドラムの男三人が並んで立っている姿が一筋縄ではいかない音楽性を雄弁に語っているのである。

曲はおそらく4人それぞれが書いているようで、ボーカルも4人全員が担当。それぞれのキャラが立ちつつも、共通したある種のセンチメントとユーモアをまとっているように思えた。その多様な音楽性を一言で表すのは難しいのだけれども、私が思い出したのはceroのファーストアルバム。特にできたばかりと言いながら披露してくれた新曲が良かった。

 


そして3組目はSaToA from 東京。

2年前にココナッツディスク吉祥寺で彼女たちのCD-Rを入手して以来、ずっとライブを観たかったのだけれどもタイミングが合わず。ようやくのことで念願がかなったわけだけれども、その過剰な期待をまったく裏切られることのない素晴らしいライブでした。

 
最新作『スリーショット』では音源では渋谷系との親和性も高い、60 ~70’sのソウル、ソフトロックを咀嚼した美しいメロディとハーモニーが印象的なのだけれども、ライブはもっとスリーピースバンドとしてのヒリヒリした感じが前面に出てきていて、もうめちゃくちゃにカッコよかった。

前者のポップスバンドとしての表情と、後者のガレージバンドとしての表情。それが一曲の中で、とても有機的に現れたり消えたりする様が予測不可能で、とにかく目が離せないのですよ。

これはちょっとまた観なければいけないやつだ…!という感じです。

 


そしてトリをつとめるのは、磯たか子率いるThree Sunshine。7月のGUIROとの対バンで見たSweet Sunshineを母体にした、フルートの浅野紘子、ドラムの春日井直人との三人編成。

当然音の数は減るのだけれども、演奏と歌の説得力、存在感がとても強力なので、会場がその世界観でぐんぐんと満たされていく。特に名古屋のシーンに疎い私にとって、浅野紘子、春日井直人という二人のミュージシャンの演奏力はかなりの衝撃。頭上を通る電車の音も、心なしか優しくなっているような気がした次第。

ラストでは細田瑞樹が再び登場。バンドをバックにキメて大団円。よき時間でした。

 

 

 

さて、この日と同じ場所で同じくらいよき時間になると間違いなしのイベントはこちら!

ご予約絶賛受付中です。

ポップミュージックの伝説と未来が交錯するひととき。ぜひお見逃しなく!

 

-Sons of Nice Songs Vol.2-

日時:12/15(土)14:00開演

会場:K.Dハポン鶴舞

出演:関美彦、さとうもか

料金:前売2000円+1D(中学生以下無料)

予約web:https://reserva.be/dreamy1

 

f:id:dreamy_policeman:20181009201948j:image

 

 

 

Sons of Nice Songs Vol.2を開催します!

f:id:dreamy_policeman:20180916120739j:plain

じゃーん!

 

「いい音楽を、いい場所、意義ある組み合わせで」をテーマにしたイベントSons of Nice Songs Vol.2の開催が決定いたしました!

 

前回はリー・ファンデさん(Lee&Small Mountains)と東郷清丸さんが激アツなライブを繰り広げてくださいましたが、今回も2018年の締めくくりにふさわしいお二人をお迎えします。

 

まずは関美彦さん!

これほどまでに甘く危険な香りを放つラブソングを歌うアーティストは他にいない!(断言)。アーバンメロウの王様です。

シンガーソングライターとして2000年代初頭から曽我部恵一プロデュースによる数々の名盤を発表していますが、近年はプロデューサーとしても青野りえ、広瀬愛菜等々の名作を立て続けに世に送り出しており、今まさに黄金期と言っても過言ではない活躍ぶり。すべてのポップミュージックラバーが目に焼き付けておかなければならないライブになることでしょう。

 

そしてもうお一人は、さとうもかさん!

大ベテランの関さんとは対照的に、2018年に現れた超新星です。5月のErectionというブロックパーティーで初めてライブを目撃。ファニーな歌声と日記を書き出したような歌詞、しかしそのメロディには風格すら漂うスタンダード感が…というコントラストにぶっ飛ばされてしまいました。今年のうちに目撃しておくべき特別な才能です。

 

今回の会場は名古屋におけるインディーミュージックの聖地・K.Dハポン。頭上を電車が走るあの空間で聴くお二人の歌を聴けると思うと、今から胸の高鳴りを抑えることができません。

 

また今回は、お子さんのいらっしゃる方でも気軽にお越し頂けるよう、昼からの開催、中学生以下は無料とさせて頂きました


ポップミュージックの伝説と希望、そして底知れなさを体験できる時間になると思います。ぜひお越しください。

 

ご予約・お問い合わせは

webサイト: https://reserva.be/dreamy1

メール:dreamycop2010@gmail.com

twitter : @dunkrock

までお願い致します!!!

 

-Sons of Nice Songs Vol.2-

日時:12/15(土)14:00開演

会場:K.Dハポン鶴舞

出演:関美彦、さとうもか

料金:前売2000円+1D(中学生以下無料)

予約web:https://reserva.be/dreamy1

 

-関美彦プロフィール-

1964東京世田谷生まれ。シンガーソングライターとして曽我部恵一をプロデュースに迎えた「Spielberg」「SEX,LOVE&SEA」の他5枚のアルバムがある。小説「Boy Meets Girl」は曽我部恵一のローズレコードのwebで公開中。ソングライター/プロデューサーとして楽曲提供は制服向上委員会、WAY WAVE等。プロデュース作品として青野りえ「PASTORAL」、広瀬愛菜「午後の時間割り」。

 

www.youtube.com

-さとうもかプロフィール-

岡山県出身在住のシンガーソングライター。1994年 6月生まれ。
初めてのピアノの発表会で弾いた「ガラスの靴」という曲の、最初の
シ・ド・ミの和音で音楽が好きになる。3歳からピアノを始め、ギター、サックス、合唱、声楽など様々な音楽に触れる。高校音楽科卒業後、音楽短期大学に入学し、ガットギターやピアノの弾き語りを本格的に始める。2015年12月にタワーレコードの Here,play pop!レーベルから初のミニアルバム、2018年3月に P-VINEからフルアルバムを全国リリース。キリン ''トロピカーナエッセンシャルズ'' Web CMの歌唱とナレーションを担当。

www.youtube.com

 

 

リゾームライブラリーに行ってきました

 f:id:dreamy_policeman:20180902085855j:image

 

我が家からバスに揺られることわずか10分、近所の図書館で開催されるリゾブラへ行ってまいりました。

 


トップバッターはホールでシャムキャッツ

彼らのライブはほとんどちゃんと観たことがないので120%偏見なんだけど、シャムキャッツとは「ほんとは直球で勝負できるけど、あえてゆるい変化球ばっかり投げてくるピッチャー」だと思っていた。しかし、配信で観た今年のフジロックのライブがど直球の素晴らしさで、パソコンの前でちょっと涙ぐんでるしまったんだよ。

そしてこの日もその時と同じ誠実さで、心のキャッチャーミットにビシビシと145kmのストレートを投げ込んでくるライブだった。しょっぱなの『カリフラワー』のキラキラ感、『Travel agency』の夏休み感、そして『AFTER HOURS』の王道感。ああ全曲いい!

「東京で一番のロックバンド、シャムキャッツです」という自己紹介に誇張なし、と思えるライブだった。

 


続いてはスタジオ(小さな方の会場)でAlfread Beach Sandal。最初に観てからもう2年以上経ってしまったけど、今でも日本一歌うまいんじゃねーかこの人って本気で思っています。この日も朴訥とした表情から生み出されるマジックボイスが洞窟のような会場を飲み込んでいくようである。。。もっと聴いていたいと思ったが、夏バテか酸欠か、頭がクラクラしてきたので無念の離脱・休憩。

 


次はホールで個人的ヘッドライナー・GUIROである。彼らのライブをこの音響の下、この椅子に座ってGUIROを観れるとは、なんて贅沢なことでしょう。主催者様に感謝である。


メンバー前回のハポンと同じ(しかしこの1ヶ月で厚海さんを3回観てる…)。

なのでより成熟した、いわば完成形のようなステージを観れるのではないかとワクワクしていたのだが、その予想は半分当たり、半分外れた。

セットリストは前回同様。しかしその演奏は安定に向かうのではなく、それぞれがより高みへ上り、バチバチと火花を散らす緊張感を増していた。特に亀田暁彦によるシンセサイザーの切れ味はほとんど暴力的なまでに鋭さを増していたように思われ、それに呼応するように松石ゲルのドラムがグイグイと攻め上がってくるせめぎ合いが実にスリリングで、座席に座っているのが苦痛になるくらいのグルーヴだった(勝手である)。

やはりGUIROとは絶えず進化を続ける、完成形のない生き物のようなバンドなんだなと思い知った次第。しかし一番圧巻なのは、こんな嵐のような演奏にも関わらず「お盆だねぇ」なんつって泰然としていた高倉一修の胆力であることは言うまでもない。

 

カネコアヤノをチラッと観たあとは、環ROY×蓮沼執太×U-Zhaan。レイハラカミとの『川越ランデブー』の頃から好きだったけど、初めての生U-Zhaan。やっと会えたね…という感慨をよそに淡々とダラダラとステージ上で続くサウンドチェック。そしてそのままなし崩し的に本番へ突入。

この凄腕プロフェッショナル三人、リハと本番、リズムとメロディ、ラップと演劇、本気と冗談、予定と即興…あらゆる境界線をボカしつつ、意表をつきつつ、居合抜きのようなせめぎ合いを続けていく。観ているこちらも爆笑したり息を飲んだりアドレナリンを出したり、まったく気が抜けない。実にすごいものを観た。

それにしても途中で披露された、「蓮沼執太が実はニューヨークに住んでないんじゃないか疑惑」を歌にしたという『ベーグル』、曲調が在NY文化人の代表・坂本龍一の『Ballet Mecanique』にそっくりだったのはシャレが効きすぎているのではないだろうか。

 


その後もスタジオでHomecomingsやGEZAN、ホールで向井秀徳などを観て、どれも素晴らしかったのですが、ここらへんで体力の限界に達したようでメモが残っておりません…。いい加減なこと書いてもアレなんで、ここで筆を置きます。

また来年。

 

 

 

 

スカート澤部vsミツメ川辺!「夏の庭」に行ってきました。

f:id:dreamy_policeman:20180812074307j:image

前回も書きましたが、夏休みの土日はとても忙しい。

だから土曜も日曜も両方ライブ行くなんてムリ!ゼッタイ!!な話なのです。それがたとえ澤部と川辺のゴールデンコンビであっても…。

 

 

ところが。

ライブ当日の朝、携帯を見てみると、届いてるんですよ予約完了メールが!

やだなーこわいなー。

 


というわけでワタシは日曜日もハポンにいましたよ。ええ。

 

 

 

オープニングアクトのてんしんくんがつくりだした絶妙に混沌とした空気の中で登場するのはスカート澤部渡

前に観たのは5月の六本木ヒルズで、その堂々たるポップスターぶりがまぶしかったのだけれども、今日はこんなに近くに!
そういえば音源やラジオのおかげで、すっかり何度も観たことがある気がしてたのですが、何を隠そうスカートの弾き語りライブを観るのは初めて。心臓がバクバクしてしまう。

 


一曲目は『月の器』。

音源は入手できない幻の名曲(再発熱望)。メロディの美しさはもちろんのこと、とにかく澤部氏がかき鳴らすギターの迫力に圧倒されてしまう。今までに感じたことのない凄み。

 
続いての『ストーリー』、『CALL』『回想』と怒涛のキラーチューン攻めには、いつもなら滝のような涙を流すところなんですけど、この日はとにかく圧が!圧が!という感じでもうそれどころじゃなかった。

ひょっとして俺にだけ見えないシマダボーイの霊がどっかにいるんじゃないかってほどの極太グルーブだったんですけど、とにかくギターが常人離れ。ほれぼれするほど縦横無尽にリフを、コードを、カッティングをキメまくる。
どうしてあれだけの名曲を、手癖やパターンを感じさせずに量産できるのか、ずっと不思議に思っていたんですが、こんなに自由に手が動けばそりゃインスピレーションも無限に湧いてくるわね…とすっかりわかったような気になってしまいました(ギターまったく弾けませんが)。

 
スカートを初めて観たのは3年前の同じく8月の名古屋で、あれから何度もライブを観てきたけれど、今日もまた過去最高を更新されてしまった。そんな心地よい打ちのめされ感があるライブでした。あぁでもまだ聴きたい曲がたくさんありすぎたぜ…。

 


さあ満員のハポン、スカートの熱演でいよいよ盛り上がってまいりました

トリで登場するのは、ミツメ川辺素!!!というこちらのテンションとはまったく裏腹に、いつも以上に消え入りそうな声で「こんばんは…」とあいさつする川辺氏。最高である。

おそらく会場にいた全ミツメギャルの皆さんは「スカートがあんなに盛り上げちゃった後で大丈夫かしら素くん…」って心配したと思うんですけど、これがもう本当に素晴らしいライブで。

 


ある時は子供のように無垢でたどたどしく、ある時はぞくっとするほどの色気を発する川辺素のマジックボイスで歌われる、初期の名曲『migirl』から最新シングル『セダン』までのオールタイムなセットリスト。

もういっぱいだと思っていた胸の中が、またひたひたと柔らかいもので充たされていく不思議な感覚。

 
ミツメというのはロックンロールのお約束を次々と無効化し、更新していく、いわば引き算のバンドで、そこがアートとして最高にクールなんだけど、その原型とも言うべき裸の歌には、掛け値無しに美しいメロディーと、まっすぐすぎるくらいの切実さが凝縮されていることに気づく。

 
それは何かを声高に訴えるような類いのものではないけれども、控えめで親切で、それでいて個として生きる現代の若者たちを象徴する普遍性のようにも思われ、実は川辺素という人は、ある世代や時代を代表するソングライターなのではないかという妄想を、本編ラストの『煙突』を聴きながら、潤んだ瞳で膨らませていた。

 
そしてアンコールでは、火星がぐっと近づいてきたこの夏にどうしても聴きたいと思っていた『fly me to the mars』を歌ってくれてなんだかもう感無量。あぁでもまだ聴きたい曲がたくさんありすぎるぜ(本日二度目)。

 


平成最後の夏に、素晴らしい才能を持ったバンドが次々と現れる中、自分がなぜスカートとミツメから目を離せないままなのか、ということを改めて気づかされてくれた夜でした。

 

 

 

ささやかだけど大切なこと 思い出野郎Aチーム『夜のすべて』

 

iphoneのメモ帳をめくっていたら、去年の夏に書いたままアップしていなかった文章が出てきました。

アナログ盤が出たことに便乗して一年遅れで掲載します。。。

 


———————————————————

f:id:dreamy_policeman:20180811232747j:image

 

思い出野郎Aチームの新作。

その名も『夜のすべて』。

 


2017年に聴いた音楽の中で、一番優しくて、一番俺の生活に近いところで鳴っている音楽という気がして、聴けば聴くほど愛しさを感じている。

 

つまらない仕事に追われるいい大人が、友達や彼女と週末のダンスフロアーで踊り、酒を飲み、また踊り、やがて月曜日の朝を迎える、というのがアルバム全体を通じたストーリー。


ふと思い出したのは、世界各地で走る夜のタクシーを舞台にしたジム・ジャームッシュの名作『ナイトオンザプラネット』。

 
それはただ単に、「ある夜に起きたことを記録した短編集」という外形的なことだけじゃなくて、愛とユーモアにあふれた人物の描写や作品全体が保持する体温に、なにか通じるところがあるように思えたのです。

 
 つまり、この『夜のすべて』という作品は、決して夜な夜なクラブに集う洒落た若者のためだけの音楽ではなくて、私のように大都会のクラブなんて縁遠い39歳会社員の心身にも沁みわたる、懐の深いポップミュージックだ、ということです。

 


例えば先行7インチにもなった超名曲『ダンスに間に合う』。
この「ダンス」という言葉を、あなたの大切にしているなにか、例えば子供とか野球とか釣りとかラーメンとか、に置き換えてみる。

 


すると残業とか休日出勤とか幼稚園の送り迎えとかで簡単に失われてしまうそれらの時間を必死に守ろうとしているあなた自身の姿と、その背中を優しく叩いてくれる大きな手が見えてこないだろうか。

そう、誰にでも人生を楽しむ権利はあるんだぜ、と。

 


そしてこのアルバムを特別なものにしているもう一つのポイント。

それは、私たちが大切にしているささやかなものたちを脅かすのは、残業や家事といったパーソナルな事情だけではなく、社会が持つ暴力的側面、例えば差別や戦争、圧政のようなもの、でもあることを指摘しているところだろう。

 


例えば7曲目『Magic Number』のディスコビートに乗せて歌われるこんな言葉たち。

 
「街に微かに暴力の香り」

「ださいレイシスト

「力をなくした歌はブックオフ

「シティポップで行進するファシスト

「役に立たないミュージック 役立たずのミュージック」

 


曲の前半では、あえて波紋を呼びそうな刺激的な単語を用いてまで、不穏な社会と音楽の無力さを残酷なまでに言い募る。

 
しかし、その間もドラムとベースは4つ打ちのビートを刻むことを止めず、ホーンはひるむことなくファンキーなフレーズを鳴らし続ける。

 
そして訪れる大サビの

「小さな魔法 ささやかな希望 僕には必要」

「少しの魔法 かけてくれよ今夜 Magic Number」

という懇願のような、決意表明のようなシャウトに繋がる瞬間。

 
俺はいつもここで、ダンスミュージックの尊さと生命力のようなものを感じて、つい極まってしまうのです。

 

クソみたいなことが9割の人生の中でかすかな光を放つ音楽をブルーズと呼ぶのならば、

この作品こそ2017年に生きる俺たちのそれなんじゃないか、と。

 


以上、ついムキになって語ってしまったけど、とにかく最高のパーティーアルバムですので、聴いてるうちに踊りたくなった方は次回のKENNEDY!!!へ。

ぜひダンス間に合うようお越しください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

溶けそうなサマタイムに東郷清丸を観た話

f:id:dreamy_policeman:20180807190001j:image

8月です。

我が家の小学生たちはサマタイムのバケーション。いわゆる夏休みの真っ最中。

しかし親であるワタシは読書感想文やら自由研究やらプールやらおばあちゃんちの犬の散歩やらの手伝いで超多忙。しかもこの溶けるような暑さである。遊んでる暇も体力もまったくないのである。

 
しかし、東郷清丸が新バンドを率いて名古屋にやって来るとなれば話は別だ。応援に行かない手はないのである。

 
清丸氏が愛知に来るのは今年に入って5回目とのこと。そのうち4回は観ていることになる。ほぼ2ヶ月に一度のハイペースだが、まったく見飽きるということがない。むしろ、その才能が変容していく様を、一瞬たりとも見逃したくないという気持ちが強くなるばかりなのである。

 


ちなみにこの日は、4月のイベントでさんざん遊んでもらった子供たちも「清丸さん見たーい」と言うので無謀にもK.Dハポンへ家族全員で押しかけてしまった(すみません)。

 


この日も、おなじみ『サンキスト』の弾き語りでスタート。しかしその艶やかな歌声が、より広く遠くまで届く力強さを増したように感じる。フジロックをはじめとした大舞台を踏みまくった経験のあらわれだろうか。

 

続く『ロードムービー』からは、ベースに厚海義朗、ドラムに河合宏和を迎えた新編成で。

まるで闇夜を切り裂くような斬れ味が衝撃的だったあだち麗三郎/池上かなえ期のサウンドは、厚海氏のキラーフレーズぶち込みまくりの音数の多いベース、あるいは河合氏の柔らかくモダンなドラムによって、より粘り気と深みのあるグルーヴを獲得していたように思う。すぐれた楽曲とは演奏者によって新たな命を吹き込まれる生き物であることを痛感させられた。

 
特にこの日は比較的テンポがゆっくりとした曲の演奏が素晴らしく、『劇薬』や『美しいできごと』は、時間の流れ(と、落ち着きのない子供たちがそばにいること)を忘れるような美しさであった。

こんなスケールのデカい、ドラマチックな曲を、去年デビューしたばかりのルーキーが書いてるなんて信じられるかい?

 
中盤では、うたのおにいさんが清丸氏に憑依する「みんなで『よこがおの歌』を歌おうコーナー」も初体験。

さっきまで危険なほどヒリヒリしたロックンロールを鳴らしまくった後での豹変ぶりをやや唐突に感じる人もいるかもしれないけれども、自分の持つ表現の幅や可能性を全て見せつけたい、というのびやかな野心にグッとくる。

 
そう、この東郷清丸の、楽曲はもちろん、アートワーク、物販アイテムから告知用フリーペーパーやMCに至るまで、自分の一挙手一投足のすべてを意味のあるものとしてレペゼンしてやろうという過剰なまでのエネルギー。

それは時に高すぎる技術と鋭すぎるエッジゆえ、とっつきにくい印象を与えることもあるかもしれないけれども、根元にあるのは、自分を見つけてもらいたいというアーティストとしての純粋で素朴な欲求と、ミック・ジャガー矢沢永吉から横山剣曽我部恵一へと脈々と受け継がれるクールでD.I.Yなロックンローラーだけが持つ生存本能だ(と勝手に思っている)。


つまり東郷清丸に注目するということとは、その素晴らしい音楽に心と身体をアップリフトされるということであり、アーティストとしての冒険譚を共有することでもある、と思うのです。こんな風に思わせるアーティストはそうそういないぜ、というのが40年生きてきたワタシの偽りなき実感。

冒頭に書いた、「一瞬たりとも見逃したくない」という気持ちは、きっとここからやってくるのであろう。

 

そんなことを、物販で購入した7インチ『サマタイム』にぶっ飛ばされた頭で考えた次第。

 

めちゃくちゃ暑かったけど、ハポンのアットホームな雰囲気もあいまって、真夏の良い思い出となりました。

(なお、本来のメインアクトであるセバスチャンXのライブは子供たちの腹減ったコールに負けて断念しました。無念…。)

 

f:id:dreamy_policeman:20180807190557j:image

f:id:dreamy_policeman:20180807190634j:image