ドリーミー刑事のスモーキー事件簿

バナナレコードでバイトしたいサラリーマンが投げるmessage in a bottle

真夏の夜の夢 GUIROとSweet Sunshineのライブを観た話。

とても悲しいことがあって、とてもライブを観る気にはなれなかった7月のある夜。

しかし、そうは言っても、なんと言ってもGUIROなのである。一年以上も待ち焦がれたライブなのである。

厳正なる抽選を乗り越えて得た貴重な機会を無駄にするという選択肢はなく、暑さにまかせ私は街へ出た。

 


彼らのライブを観るのはこれで三度目。

一度目は二年前のハポンワンマン。そして二度目は昨年の名古屋クアトロでのceroとのツーマン。

いずれも音楽を聴くと言うよりは、彼らのつくった船で、知らない海を旅するような、特別な体験だったことを覚えている。

 


この日のGUIROは、ボーカル高倉一修、ドラム松石ゲル、ベース厚海義朗、ギター牧野容也に加えてピアノ西尾賢、シンセサイザー亀田暁彦のすべて男性の6人編成。個人的に初めて観る亀田氏はGUIROのオリジナルメンバーとのことだけれども、ARPiPhoneiPadというオリジナリティあふれる機材セットからしてすでに濃厚なGUIRO感がにじみ出ている。

 

 

 

一曲目は『あれかしの歌』。

流麗な倍音をたっぷりと湛えた牧野館長のギターに、少年のような若々しさの中に深すぎる色気を潜ませた高倉氏のボーカルが重なった瞬間に鳥肌が立つ。決して抗うことのできないこの美しさよ。GUIROが始まった…という感慨に襲われる。

 


原曲通りに一番を演奏後、パッと暗転するようなブレイクの後に流れ出すのは、軽やかなサンバのリズム。

なんとそのままジョビン/ジルベルトによるスタンダードナンバー『三月の水』のカバーへ。

そのアイデアはもちろんのこと、ついばむようにポルトガル語の歌詞を歌い、軽やかにステップまで踏む高倉氏のチャーミングぶり、自由なふるまいに驚かされる。

 


そう、この日のGUIROはこれまで観た二回の神々しいほどの緊張感とは異なり、終始とても温かみのある、リラックスした雰囲気をまとっていた。これはハポンという会場の効果か、はたまたSweet Sunshineの前座(高倉氏曰く)という気楽さからくるものか。

 


三曲目の『祝福の歌』は(おそらく)未音源化のベース厚海氏によるボサノバ風ナンバー。どことなく初期ピチカートファイブを彷彿とさせる美しいメロディが印象的だった。

そのアウトロからまたしてもメドレーで突入したのは『山猫』。スタジオ録音の音源からしてポップミュージックの域を超えたスリリングなセッションが印象的な曲だけれども、ライブで体感するそれはもう通常の音楽体験を超えたクライマックス感がある。

この日もピアノの西尾賢と松石ゲルのドラムを中心に、闇夜の中で獣たちが咆哮をあげるような演奏と、その混沌において見事な剣さばきを見せる王子様のような高倉一修のボーカルが相見える様が声も出ないほどのスリリングだった。

 


嵐の後の静けさ、印象派の絵画のような美しさが漂う『いそしぎ』を経て演奏されたのは『エチカ』。

GUIROの中でもっともポピュラリティーのあるメロディとリズムを持つ楽曲だと思うのだけれども、この日はそこに亀田氏が絶妙に差し込んでくるシンセの音によって、この曲の持つファンクネスと同時代性を際立たせていた。GUIROが進化し続ける有機体であることの象徴のように思えた。

 


そして際立つファンクネスと言えば、『ハッシャバイ』を挟んで演奏された『アバウ』も出色だった。

硬質なグルーヴ、熱いボーカル、そしてデュークエイセスのよう男性コーラスは 、私の中にある男性的というかロックンロール的肉体性を刺激してくるものだった。

つまり平たく言うとメチャぶち上がったぜ!ってことなんですけど、GUIROのライブでこんな気持ちになるとは思わなかったよ。

 


ここでGUIROの出番は終了…のはずでしたが、こんな熱演を見せられた私たちが彼らをそのまま帰すはずもない。

アンコールを求める拍手に応えて披露されたのは『東天紅』。

濃厚な旅から戻ってきた私たちを包みこむような、優しく気品のあるピアノ。そしてまっすぐで安心感のある高倉氏の歌声に、私の心深くに沈む悲しみにも、やわらかい光があたるような気持ちがした。

 


まるで夏の夜の夢のようなGUIROのライブはこれにて終了。ああ次に観れるのはいつかしら…といつもなら思うところなんですが、今回はもう決まっているのですよ。

しかもなんと来月、おらが住む街・岡崎で。コイツは熱い夏になりそうだ…。

 

 

 

あ、あとMCで高倉氏が厚海義朗氏がサポートすることになった東郷清丸について「すごくかっこいい、ライブ必見じゃないですか?」とおっしゃっていたことも付記しておきます。

 

 

 

GUIROに続いて登場したのは磯たか子率いるSweet Sunshine。

名古屋の音楽シーンというのは、よそから来た私のような者から見ると、流行や既成のジャンルにもとらわれない個性的なミュージシャンが多い一方で、個性的すぎてなかなかとっつきにくいアーティストも多いという印象がある。

しかし初めて観るSweet Sunshineはそうした閉鎖感とは一切無縁の、とても開かれた、メロディやリズムをオーディエンスと共有する喜びにあふれたバンドだった。

 


彼らの音楽性を一言で表すならば、シュガーベイブ直系のシティポップということになるのかもしれないけど、単なるカテゴライズで片付けてしまうわけにはいかないリアリティ、血の通った真心のようなものを一曲ずつから感じた。

そして驚くべきは磯たか子の包容力ある歌を時にがっちりと支え、時に洒脱に彩っていく鉄壁の演奏。ビビりました。

 

 

 

 

 

 

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