ドリーミー刑事のスモーキー事件簿

バナナレコードでバイトしたいサラリーマンが投げるmessage in a bottle

デモの戸惑い、大人の責任。新装クイックジャパンを読みました。

f:id:dreamy_policeman:20160319100151j:image
 

朝起きて、仕事に行って、ご飯食べて、夜寝るまで、「自分だけの意思だけ」による行動は、日々の暮らしにおいて、実はほとんどない気がする。

 
 
ご飯を食べるのは本能。
仕事は組織の一員として。
子供を風呂に入れるのは親としての役割。
 
 
それって100%自分の意思か?と言われると、ウーンとなってしまう。
 
 
そんな中で、デモに参加するということは、数少ない、完全に自分の意思と責任に基づく行動のひとつかもしれない。
 
 
とは言え。
 
デモの参加者として路上に立った時に感じる、警察官の身体を射抜くような鋭い視線や、通行人からの好奇の眼差し。
 
 
普段は超模範的サラリーマンであるはずの自分が、世間を敵に回す犯罪者になってしまったかのような、言いようのない心細さ。
 
普段の生活では、どれだけ組織や肩書きという傘に守られているのかを、肌で感じる瞬間。
 
 
ぶっちゃけ、何回味わっても慣れることができません。
 
 
でも、そんな時にはいつも、SEALDsの奥田愛基さんの「勇気を出して、孤独に思考し、判断し、行動してほしい」という国会公聴会での名言を思い出し、なけなしの気合いを奮い立たせる。
 
23歳の若者に叱咤される37歳、メチャかっこ悪い。
 
でも、すごい人をすごいと認められなくなった時こそホントにおしまいですからね、それでいいと思ってますよ。
 
 
しかし、不思議なのは、成し遂げたことの巨大さとは対極にある、奥田さんの超普通なお兄ちゃんぶり。
すごく弁が立つわけでもなく、特殊なパフォーマンスをするわけでもなく。
 
 
にもかかわらず、去年の夏は日本中が彼に注目し、共感して、路上に出ていったわけだし、東浩紀小林よしのりと言った妖術の使い手と対談しても、いつの間にか自分のペースにやんわりと巻き込んでしまっている。
 
 
そのチカラの源泉はなんなのか、と。
 
みんながそれを知りたいから、クイックジャパンの表紙になっちゃったと思うんですけど。
 
ワタシももちろん読みました。
 
 
アラーキーによる巻頭グラビアには、「お、モードチェンジか?」と思ったけれども、単独インタビュー、コムアイ、古市憲寿との対談を読めば、いずれもいつも通り温厚かつゆるめのトーンで話す奥田さんがいる。
 
 
そんな彼が、明らかに苛立ちを隠さなかった対象が「君たち、次はどうするの?」「SEALDsもアベさんも、どっちも正解だよね」という、自分の旗色を示さない、傍観者としての目線や声。
 
 
多分、ホンモノの政治家・活動家ならば、こういう反応にはならない。
むしろここぞとばかり、自分のビジョンや政策や、現政権の問題点を能弁に語るはず。
 
 
しかし、彼はそうではなく、真っ先に、傍観する人々への失望を露わにする。
まーだそんなことを言っているのか、と。
こんな普通の俺が、しかたなくやってんだから、せめて見て見ぬフリするのはやめようぜ、と。
 
 
この、奥田さんが今なお「普通の俺」という立ち位置をキープしている点。
 
メディアにあたりまえのようにガンガン露出している彼の姿を見てると、つい忘れちゃうんだけど、本当にすごいことだと思うんですよ。
 
だって、俺が単なるデモ参加者の一員として感じる数億万倍ものプレッシャーを、組織や肩書きもなく、金や名声といった割り切れる目的もなく、素の自分として引き受けるということなんだから。
 
 
いやいや、SEALDsという組織に所属してるじゃねーか、政党のバックがついてんじゃねーの?という方には、ぜひ一度、彼らのデモに足を運んでみることを強くオススメしたい。
こりゃガチのアマチュアだわ、と思うはずだから。そんなもんですよ、SEALDsなんて。
 
 
でも、だらしないオトナ(もちろん俺も含めて)は、そんな彼らの準備してくれた場所に乗っかることしかできなかったんです。
 
それこそ本当にメチャかっこ悪い。
 
 
そして奥田さんがあまりにも「普通に」傷つきながらも頑張ってるから、ますますその責任を感じてしまう。
 
そういう気持ちが、みんなを国会前に連れ出したのかな、と思ってます。