ドリーミー刑事のスモーキー事件簿

バナナレコードでバイトしたいサラリーマンが投げるmessage in a bottle

子連れでロックする方法。森道市場2018に行ってきました(2日目)

さて森道、運命の2日目であります。
予報通り朝から雨。
落ち込む気持ちと筋肉痛をぐっとこらえて朝から宿で卓球などをしてから出発。

音楽に興味のない次女は2日目は留守番することで話がまとまっていたのだけれども、やっぱり一緒に行く宣言。
隣接するショッピングモールでカッパを買ってから入場(この異常なコンビニエンスぶりがありがたい)。


この日のトップバッター・片想いもずっと観たいと思いつつ、これまでチャンスがなく今回が初体験。

 

朝っぱらからあだち麗三郎の叩き出すファンキービートに腰が喜び、出番がない間は体育座りで待機するベルセバばりのスタイルのメンバーたちに心がほっこりと。
そして日芸演劇学科中退の片岡シン氏が持つ、オーディエンスの耳目とハートを掴んでいくなんとも言えない人間力のようなものが、雨でヒタヒタになりそうな気持ちを持ち上げてくれた。

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さぁ、準備運動は十分だ(©️東郷清丸)となったところでThe Wisely Brothersをサンドステージで。
実はワイズリーは初めて長女が自分の意思で観たいと言ったバンドなんですが、お前なんかより俺の方が観たかったし!

 

さて約1年ぶりに観たワイズリー。まるで学園祭バンドのようなフレッシュさはそのままに、ロックとしての鋭さが更に研ぎすまされたような印象を受けました。コードやボーカルの端々に見え隠れするささくれやユニークな歪みがカッコよかった。
ちなみに長女はメロディーと歌詞がハッキリとしていたファーストが好きと言っていますが、メジャーから抽象的な手触りの作品を出したところに彼女たち(とプロデューサー片寄明人)の強い意志と知性を感じるんだよね。

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さて、そんなゴタクを並べている間にもどんどん強まっていく雨足。
時刻が12時を過ぎたところで、次女が「寒いのでもう帰りたい」とおっしゃる。
せっかくレインウェア買ったのに…と思いつつも、泣く子と大雨には勝てません。

いったん自宅に戻り、次女を祖父母に預けてから、東郷清丸が出演する14時半までに会場まで戻ってくるという一か八かの勝負に出ることに。

雨だし車も混んでるし、無理かもしれない…と泣きながら往復約60キロを激走。
清丸氏の登場10分前に会場へ戻ってくることができた。
我ながら自分の執念深さに引きます。

 

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しかし、それだけの情念を注ぎ込んでもバッチリ応えてくれるのが東郷清丸というアーティストの頼もしさ。
会場のはしっこで強すぎる風雨にさらされるネバエンステージで、悠然とセッティングを終えた彼の眼差しには、殺気にも似た何かが宿っていた。

そしてトレードマークのリズムマシンスタインバーガーのギターを鳴らしながら、荒れ狂う天気に挑むような歌声には、これまで観た二回のライブとは明らかに違う迫力があった。雨に打たれながら聴く『ロードムービー』の不気味なまでの美しさよ…。
終演後に長女が「今日はちょっと怖い感じだったね…」と呟いていたけれども、実はパパもちょっと怖かったぜ。

同じ曲を同じ楽器で演奏しているのに、ここまで違った表情のパフォーマンスを見せるとは。
この真っ赤に燃えるガラスのような才能にふさわしい場所はもっとずっと大きなステージだということを、あの場にいた全員が痛感したであろう30分。


さて、続いては光速でグラスステージに移動。
いよいよ大本命サニーデイ・サービスの登場である。

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サニーデイが森道に出るのは15年以来。
丸山晴茂がドラムを叩くスリーピース編成で、心の中にある大切なものをそっと掬い取っていくような素晴らしいライブだった。
しかし3年前のあの日、サニーデイがバンドの枠をぶっこわしながらシーンの最先端をぶっちぎる作品を産み落とし続ける2018年が訪れるなんて、いったい誰が想像できただろうか。
この日のライブは、そんな3年間の最良を凝縮した素晴らしいものだった。

 

つい先日突如リリースされたライブ盤『DANCE TO THE POPCORN CITY』と同じく、『泡アワー』『青い戦車』からスタートしたライブは、降りしきる大雨すらドラマを演出するための小道具にしながら、太いダンスビートでオーディエンスをのテンションを煽り続けていく。田中貴のベースの切れ味がとんでもなく鋭くて、ハッピーマンデーズのベズみたいな気分でデタラメなステップを踏みたくなる。

そして3曲目の『冒険』の後、聴きなれないイントロが鳴り響いた後に姿を現したのはC.O.S.AとKID FRESINIO!
野音でもクアトロでも観ることのできなかった『街角のファンク』をまさか蒲郡で観れるとは!思いがけない神様からのプレゼントに天に召されていく私の魂。

 

しかしこの日のサプライズはこれだけでは無かった。
「最後に新曲やりまーす」という一言の後で演奏されたのは今週Spotifyで配信されたばかりの『FUCK YOU 音頭』!!!
大瀧詠一ソウルフラワーユニオンセックス・ピストルズニルヴァーナをごった煮にしてしまった、という言葉でまだ足りない、本物のレベルミュージック。

どうしてこの人はこんなにぶっ飛んでいられるのか。
雨でずぶ濡れになったホワイトファルコンをかき鳴らす曽我部恵一を呆気にとられて見上げていた。

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さて、夕闇が迫ってきました。
なんとしてもFascism(小田島等+長尾謙一郎)まで粘ろうと思っていたけど、ネバエンステージが続行不能となってしまい出演キャンセル。
おまけに女房殿のレインブーツもぶっ壊れて浸水したので、くるりにうしろ髪を引かれつつもここで撤収を決断2018年の森道市場が終わりました。


なんだかんだ大変でしたけど、今年もたくさんいいライブを観れたし、定点観測的に子供たちの成長も感じられるし、ありがとうございましたとしか言いようがない。
そりゃ不便な面とかいろいろありますけど、なんせチケット代3000円ですからね…。おねだん以上の充分すぎるホスピタリティがあると個人的は思っております。


また来年もよろしくお願いします。