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サニーデイ・サービス「Popcorn bllads」全曲レビュー。

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昨日、正確には今日の夜、突如としてリリースされたサニーデイ・サービスの新作アルバム「Popcorn ballads」。

小沢健二小山田圭吾が再び歌を取り戻し、D.A.NやYogee new wavesを始めとする新鋭が次々と傑作をモノにしていく、この2017年に投下された全22曲、85分の大作。

「誰がシーンの顔なのか、ハッキリさせようぜ」と言わんばかりの曽我部恵一のただならぬ気合を(勝手に)感じたワタシも、この興奮をフィードバックしなければ!という気持ちになってきましたよ。

というわけで、「今日初めて聴きながら書いた22曲分の感想メモ」をそのまま公開します。

 

M1「青い戦車」
前作「Dance to you」に収録された「冒険」を、さらに野心的に進化させたようなメロディとリズム、扇情的なサックス。そして大胆な韻の踏み方からして新しいリリック。期待しか感じない一曲目。ヤバい。

M2「街角のファンク」
まさかの曽我部×オートチューン!「ファンキーな生き方、ファンキーな死に方」というフレーズが印象的なフックから、一気に視界が開ける流麗なサビ。そして曽我部がラッパーをフィーチャーした曲にハズレなし。
今回のパートナーはC.O.S.AとKID FRESINO。P.S.Gとやった「サマーシンフォニー」、MGF「優しくしないで」に続く名曲確定。「エレクトリックピアノとコーヒー」というフレーズに象徴される美しさも内包。

M3「泡アワー」
ファンキー路線はまだ続く。泡アワーというタイトルに象徴されるラフでザクザクっとしたトラックに絡みつくギターがかっこいい。良い意味でデモテープのような荒々しさ。それでいて涼しげな上品さ。

M4「炭酸xyz」
「泡から炭酸」のトラックを引き継ぐ、長い長いアウトロのような曲。例えが古いけどStone rosesにおける「Waterfall」と「Don't stop」と同じ関係か。しかしこの曲の組み合わせによって、両者の持つエッジがバキバキに際立つ。

M5「東京市憂愁」
タイトルには東京とあるも、美しいイントロから漂う無国籍感が心地よい。しかし、ロボ声で「我が身果てるまで踊ってれば」と歌われる不穏さは、坂本慎太郎の作品を彷彿とさせる。

M6「君は今日、空港で」
ここで急にメロウでアコースティックなサニーデイが戻ってきて面食らってしまう。しかし曽我部のこの身勝手さこそロックンロールだ。でもどことなくいつもよりアーバンなAORを感じせる。シンセがいい。

M7「花火」
続いては突然のナイアガラなウォールオブサウンド!雄大で優しいメロディは大瀧詠一のそれそのものと言ってもいいのでは。それにしても、バッサバッサのジャンルや曲調を横断して行くこのアルバムの編集感覚のダイナミックさよ。

M8「Tシャツ」
続いてはフィフティーズなロックンロール。日々の営みを感じさせる歌詞にソカバンを感じる。

M9「クリスマス」
「Tシャツ」に続いてデモテープ的タイトルの9曲目はまたファンキー路線。グルービーなリズムにこの魔法のファルセットボイスが乗った時点で勝負あり。最高。「彼女の名前はクリスマス」というリフレインの中で踊り続けたい。

M10「金星」
続いてもファンクチューン。ただし「クリスマス」よりもモダンなヒップホップマナー。だらしなく溶けていきそうなセクシーなメロディ。都会のざわめき雑踏を感じさせるトラック。これぞシティポップだと思った。

M11「Heart & soul」
いきそうでいかない、寸止めインストグッドメロディの片鱗が愛しい。ちょうど折り返し地点のインタールード。無作為なフリしてちゃんと構成が考えられていることがわかる(あたりまえか)。

M12「流れ星」
曽我部恵一らしい情熱を感じさせる歌とギター。しかしここでも貫かれるファンクネス。サビの瑞々しさ、力強さよ。

M13「すべての若き動物たち」
なんだこのタイトルそのまんまの、メロディから伝わる若々しさ、新しさは。手グセから無縁の新たな境地を感じさせる。「金星」でも垣間見せたラップ的ボーカルも新鮮。

M14「Summer baby」
80年代エレポップ的なトラック。このチープで軽やかなトラックと、メロウなメロディの対比が切なくて涙が出そうになる。

M15「恋人の歌」
一転して弾き語り。一人であること、孤独を受け入れようとする歌詞。一人ぼっちラジカセで録音したような音質が寂寥感を強調する。

M16「ハニー」
「恋人の歌」と同じくアコギメインのメロウチューン。「Dance to you」リリース後のライブを見た時も思ったのだけれども、この少し懐かしいシンセの音がサニーデイのサウンドに欠かせない隠し味になっている。

M17「クジラ」
ミニマルなヒップホップ的なトラックに絶え間なく乗せられる言葉は、意味よりも抽象的なイメージを喚起させるために費やされている。クールだ。クジラはボーンと太いキックの音から来てるのだろうか。

M18「虹の外」
ファンキーシティにウェルカムバック。この最高にイカしたディスコチューンは、インディーソウルに対する曽我部恵一パイセンからの回答、という気もするくらいのポップ感。

M19「ポップコーン・バラッド」
アメリカンな荒涼とノスタルジアを感じさせるギターとエレクトリックピアノ。一聴では地味な感じだけど、聴くごとに増していくであろう魅力を感じる。

M20「透明でも透明じゃなくても」
ビートルズ風の黄金のメロディが中空を漂っていく、タイトル通りの透明なデイドリーム感。甘いあまいサイケデリア。間違いなく名曲。

M21「サマー・レイン」
ジザメリ的ノイズギターから始まる、カラカラにさめきった、カリカチュアなロックンロール。「ポップコーン・バラッド」から続くロードムービー感がクール。

M22「Popcorn runout groove」
この大作に対する深い意味付けを拒否するように、不敵なユーモアを漂わせた、混沌とした短いアウトロ。

さて、聴きながら一気に書いた22曲分のメモ。
やや意味不明の記述もありますが、総じての感想としては、全編を貫く斬新さと、とにかく今を踊り続けるのだ、という強靭な意志にメチャクチャ興奮した、ということが一番。
そしてノンプロモーション・ストリーミング配信オンリーというリリース方法も、「とにかく一番最初に摩擦係数が高いことをやったやつが一番カッコいい」というパンク・ヒップホップの大原則を踏まえれば、(いろいろな意見はあるかもしれないけど)最高にイカしてると思う。

でもこれ、ライブで再現できるのかしら、という疑問と期待を胸に来月のOur favorite thingsを待ちたいと思います。