シャムキャッツの新作「Friends again」を聴きました。
過去二作の小田島等によるぶっ飛んだアートワーク(最高)から一転、サバービアな温度感が素敵なジャケットと歌詞カードがまず素晴らしい。CDで手に入れて良かったなと思わせる力があります。
さて「AFTER HOURS」でやられた私にとって、シャムキャッツはリズムのバンド、という勝手なイメージがあった。メロディアスなベースラインを中心にボーカルを含めた音色が折り重なっていくような。
でも、この作品では独立した4ピースがとてもシンプルに、歌を引き立てるように鳴っている。
このフラットで均等な感じが「Friends again」のゆえんなのかもしれないと思いつつ、「Grand prix」以降のティーンエイジファンクラブの多幸感を思い出しました。
そしてそんなバンドサウンドに乗る歌は、何かを声高に訴えるようなやつじゃなくて、鼻歌のようにさりげなく光り、じわじわと心にしみていくような手触り。
歌詞についても、いかにも歌詞らしいフックはほとんどゼロ。
しかし一見淡々とした光景の中に浮かぶ「特別な何か」をすくい取っていく夏目知幸の異才ぶりが際立っています。
特に素晴らしかったのが、M1「花草」。
二人でマンションの屋上に登るってだけの話なんだけど、
「コカ・コーラの大きい看板
スポーツ選手が引き伸ばされている
君はふいに大の字に寝そべり(その選手のように)
このまま僕らも終わるって目をした」
このフレーズが飛び込んできた瞬間、おい松本隆かよ!って俺の中の何かが爆発したし、
そんな思わせぶりなフレーズから
「君の顔のそば
コンクリートから伸びて
雑草が花をつけていた」
って描写で終わった時には、小沢健二の「向日葵はゆれるまま」(あるいは山田太一の「丘の上の向日葵」)を思い出しましたよ。
夏目くんは本当にすごい詩人だと思います。
大人なのに髪の毛ピンクだけど。
そしてもう一つ触れておかなければならないのはギタリスト・菅原慎一の充実ぶり。
ミック&キース、ヒロト&マーシーからひさし&コータローまで、脈々と受け継がれる。
「ギタリストが歌うのはアルバムにつき1曲まで」というロックバンド鉄の掟(適当)を破り、本作で彼がリードボーカルをとったのはなんと3曲。
しかも、どれも夏目ボーカル曲よりもある種の華がある曲ばかり。
ちょっと張りきりすぎじゃないかと思わなくはないけれども、本職のギターでもいい仕事。淡い色合いのアルバムの中で光る、差し色のように鮮やかなフレーズの数々。いわゆる「違いを生むプレー」ってやつですね。素晴らしい。
というわけでもしかするとパッと目を引くキャッチーさに欠けると思われてしまうかもしれない作品ですが、ポップもロックも恋もキスもセクシーも、君と僕の毎日の中にしかないんだぜ、というシャムキャッツならでは視点をより強固にした、生命力にあふれる作品なんではないでしょうか。
とりあえずこちらからは以上です。