バンドとしてのクライマックス -スカート「静かな夜がいい」について-
相変わらず灰色の濁流に飲み込まれてしまいそうな日々。
それでも毎日なんだかんだと音楽のことを考えてるんだから、俺は自分の想像以上に音楽が好きなのかもしれない。
つーか、こういう時こそ身に染みるグッドミュージックのありがたさよ…。
そしてきっとそんな俺を遠くの空から見守ってくれていたんだろうね、スカート澤部さんは。
勤労に感謝する11/23にニューシングル「静かな夜がいい」が届きましたよ。
この日ばかりは残業もそこそこに、電車の中を走って帰り、アンプのスイッチをオン。
すでにライブではもう披露されているこの曲、疾走するギターリフ、メジャーコードの突き抜け感、ついヒップがムーブしてしまうセクシーなリズム。
最初に聴いた時から、サンボマスターの名曲"Very special"よろしく、ついにスカートが山下達郎に決着(なんの?)をつける日がきたぞ!と勝手に超盛り上がっていました。
でも、スタジオ録音された音源で聴くと、その直感は半分アタリで半分ハズレ、だった。
もちろん楽曲そのものは、このままシーブリーズとかカルピスウォーターとか麒麟淡麗のCMソングにしちゃってくれよ、というスカート史上最大のナイスポップぶり。
カーステで100回くらいリピートさせながら海に行きたくなる気持ち良さ(冬だけど)。
そういう意味においては、いよいよ間違いなく達郎クオリティ。
でも、やっぱりなにかが違うのです。
巷で流れるポップソングとは。
なんつーか、ものすごくこの5人(+トリプルファイヤー鳥居氏)で演奏しているぞ!という生々しい熱とゴツゴツとした手触りがあるんですよね。
例えば達郎でもTKでも、お茶の間に入り込んでくる音楽って、「歌とそれ以外」の情報がもっとキッチリ整理されているように思うのです。(それがハイフィディリティということなのかもしれないけど)。
でも、この曲では、演奏してるメンバーの姿がはっきり見える。
歌と演奏が、分かち難く等価なものとして耳に飛び込んでくる。
しかも、カップリング曲も含めて、その5人による演奏が頂点に達してるな、ということが素人の私にもビシビシ伝わってくるのですよ。バンドが輝く時とはこういうことか、と。
こんなふうに、自分と同じ目線、同じ空間で、魔法のようなポップミュージックを鳴らすバンド、やっぱり他には無いと思いましたね。
もしかしたらそれは、ある角度から見れば、商品としての洗練が足りない、ということなのかもしれないけど、そんなヤツらはもうグッナイ。
「俺たちはしないよ」ということでいいんじゃない?
タックスマンと秋の空
先日、遠く離れた実家に住む父が孫、つまりワタシの子供たちに会うため、わが家にやって来た。
彼はいわゆる昭和のカタブツ親父なので、いい歳してロックなどにうつつを抜かす不肖の息子としては、顔を会わせるのが億劫な存在ではあるのだが、彼が残りの人生でこの家を訪れるのもあと何回あるのかしらんなんてことを考えると、俺はなにか大事なことを言い忘れているのではないかという気持ちになったりもする。
さて、そんな父親を乗せて走る車の中、ラジオから私の大好きなビートルズの"Taxman"が流れてきた。
あのタイトでミニマルなリズムと金属的なギターリフに(心の中で)盛り上がっていたところ、隣に座る父が「お、Taxmanか。懐かしいな」と言ったのにはちょっとビックリした。
東北の田舎育ちの彼が知っているビートルズの曲なんて、せいぜいイエスタディとかレットイットビーくらいだと思っていたのに、(代表曲とはいえ)シングルにもなっていないこの曲を知っているとは。
もしかして、彼も若かりし日に"Revolver"を聴いていたのだろうか。そしてあのギャギャーンというギターに胸を躍らせたりしていたのだろうか。
瞬時にいろんな疑問が湧いたものの、もちろん口になんてしませんよ。こちらも昭和生まれの不器用息子ですから。
ま、言い忘れたことがあったとしても、言わないまま終わってしまったとしても、それならそれでいいじゃないか。
それこそが我々の二人の関係というものだったんだから。
そんなことを思ったある日でありました。