
この1時間半を端的に表すならば、"A long day"という作品の異形ぶり、ミツメというバンドが到達した標高の高さとこの先の可能性を強く感じたライブ、といったところでしょうか。
デュルッティコラムの"Sketch for summer"(たしか)と共に登場したミツメの四人、バンド史上屈指の大ポップチューン"天気予報"からスタート。
キャッチーなメロディ、絶妙なギターリフに、のっけから引き込まれる。
この日のセットリストは6月に出た新作"A long day"の収録曲を中心に、旧譜からの曲を織り交ぜたもの。
普通こういう時は「新曲も旧曲も違和感なく溶け込んで」と書くのがマナーなのかもしれませんが、個人的には改めて"A long day"というアルバムがこれまでのサウンドとは明確に一線を画したものである、ということを強く感じました。
ミツメのサウンドの特徴だったダビーなエフェクトがほとんど介在しないデッドな空間の中で、四人それぞれが鳴らす素のフレーズが、ガチでぶつかり合い絡み合う。
当たりどころが悪ければ致命傷になりそうな、真剣での斬り合いのごとき緊張感。
あの脱力MCとは途方もない大きさのギャップがありますが。
"A long day"というアルバムはミツメにとっては、非連続的な飛躍を経た、まさにネクストレベルの傑作なんだなと思いました。
一方、旧譜からの楽曲の演奏は、(ミツメに似つかわしくない言葉だけれども)もはや円熟の域と言っていいほど堂々としたもの。
シンセの音色一つひとつやディレイの残響まで、完璧な世界観の下にコントロールされていたように感じました。
ちなみに個人的な白眉は"Fly me to the Mars"。
ホント火星までぶっ飛ばされそうな説得力でしたよ。
そういうわけでこの日もとても素晴らしいライブだったわけですが(MC以外は)、同時に、ライブバンドとしてのミツメの大きな伸びしろも感じました。
もう少し正確に言うと、"A long day"のわずかな揺らぎも許してくれないストイックな楽曲そのものが要求する演奏レベルは、もっと高い場所にあるんではないか、ということなんですけど。
そしてその要求値を超えたパフォーマンスに到達した時には、いよいよ「コーネリアスの後継者はミツメ」くらいのところまでいくんじゃないかと妄想してみたり。
すごく勝手なこと言ってる自覚はありますけど、これは次のライブがすでにもう楽しみ、ということの裏返しですからね。
なんて思ったら、今月また名古屋に来てくれるとのこと。
ありがたいことでございます。