ドリーミー刑事のスモーキー事件簿

バナナレコードでバイトしたいサラリーマンが投げるmessage in a bottle

サニーデイサービスじゃない方の"コーヒーと恋愛"

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サニーデイサービスの"東京"に収録された楽曲と同名の小説を偶然に発見。

 
 
作者の獅子文六という人のことももちろん知らなかったけど、このタイトルにしてこの装丁(もちろん小田島等)、しかも解説は曽我部恵一が書いているとくれば、わたしのような者が買わない理由は一つもないのであります。
 
 
 
しかしこの本を、いかにもサニーデイサービス的な"東京の若者たち"による甘酸っぱいラブストーリーを期待して読むと肩透かしを食うことになる。
 
 
なんせ主人公は40代の庶民派女優。
 
 
きょうび40代と言えば、まだまだ恋愛も現役で、ということなんですが、まだ平均寿命も短かったであろう昭和30年代。
主人公がお婆呼ばわりされるシーンもたびたびで、ロマンチックな要素はほとんどございません。
 
 
主人公・小池モエ子さんが、若い女優に略奪された8歳年下の元夫と、茶道ならぬコーヒー道を確立せんとする8歳年上の資産家男性の間で揺れる様をユーモラスに描いた作品、でありま
す。
 
 
なのであくまでも昭和のホームドラマ感覚で気楽に読めばいいのですが、明治生まれにしてパリ留学経験のある獅子氏の感性によるものなのか、そこはかとなく漂うアーベイン感、洒落た洋画的なテンポ感もまたモダンで心地よいのであります。
 
ワタシが特に彼の粋を感じるのは、「男をちっさく、女性はカッコよく」描く視点。
 
 
 
モエ子を悩ます元夫(ヒモ)と現恋人候補(ブルジョア)は、二人ともいつも芸術とか革命とかナントカ道とか小理屈ばっかりこねているのに、いざとなるとグズグズと決断できず、ちっぽけなプライドばかりを優先する優柔不断ぶり。
 
しかも二人の年齢差は16才。
 
要はオトコはいくつになっても、そして金があっても無くても情けない生き物である、と。
 
 
対照的に、主人公のモエ子さんはもちろんのこと、元夫を略奪する19歳の新人女優・アンナでさえも、移ろいやすい世間を、自分の足でしたたかに、かつ凛として渡り歩いていく、実に魅力的なキャラクターとして描かれているのであります。
 
 
やっぱりモダンな芸術家はまず女性上位万歳!と言えないと、と思った次第。
 
 
ま、この年まで常に強い女性たちに囲まれて生きてきたワタシ自身はフェミニズムというよりは、奴隷根性に近い感覚を持って生きてますけどね。ハイパーモダンの境地ですよ。
 
 
 
ちなみに、私がこの本を読んだ後に連想した音楽はサニーデイサービスではなくて、二階堂和美の"日向月"という曲("二階堂和美のアルバム"に収録)。
 
 
イロイロあってもスッパリ前向いて歩くのよ、という女の決意のカッコよさ!が通じるものがあるな、と。
 
 
歌詞を書いてるのは二階堂和美じゃなくてイルリメ(さらうんど)というところも逆にポイントが高い。
 
 

ほぼ日の扇子のCMに使われてました。