ドリーミー刑事のスモーキー事件簿

バナナレコードでバイトしたいサラリーマンが投げるmessage in a bottle

”田中ヤコブと家主” @wwwの配信ライブを観た話

例によって配信最終日に駆け込みで田中ヤコブと家主のツーマンライブ@渋谷wwwを観た。もう最高すぎてその晩のうちに二回も再生してしまいましたよ。


最初は田中ヤコブのエレキ弾き語りソロ。今のところ唯一のヤコブ体験はちょうど2年前の今ごろ観た「うたのゆくえ vol.2」に合わせて行われた京都タワレコのインストアライブ。あの時も今回と同じ弾き語りだったけど、聴き手のことを意識しているのかどうかも分からない閉じ方と、とりあえずただ者ではないぞ…という鬼才感が強く印象に残っている。なのでこの日のヤコブ氏の、聴き手に真っ直ぐ向けられた歌心にはとても驚いたし、この人の歌はきっと50年後も必要な誰かに届いているだろうな…と勝手な想像を膨らませてしまった。特に、この社会からはみ出しそうになってるすべての老若男女を照らしてくれるような「ミミ子、味になる」はぜひちょうどこの日、浪人することを決めた甥っ子にも聴いてほしいな、レコードをプレゼントしようかなと思ったほど。でもナントカ坂46が大好きなんだよな、あいつ…。


そして、続く家主。こちらはまだ生で目撃したことはなく、去年渋谷ラ・ママの配信ライブで観たことがあるだけ。あの時は荒々しいガレージ感とエバーグリーンな楽曲、そして高校野球の部室にメジャーリーガーが混じったようなヤコブ氏の超絶ギターの支離滅裂感にビリビリきたけど、この日の彼らはそのバラバラ具合をバンドの個性としてモノにしているように思われた。

ヤコブ氏のギターはハードロック直系のバカテクフレーズをガンガンぶち込んでくるけど、そこには大ネタづかいのヒップホップのようなダイナミックな快感とユーモアがあり、それを受け止めるバンドの(100%褒め言葉としての)野暮ったさもたまらない。ベースの田中氏の朴訥としたノエル・ギャラガー的佇まい、冬なのに坊主でタンクトップの岡本氏の漫画感、ボーカルを取る時だけつい直立不動になっちゃう谷江氏の愛らしさ…。おいバンドって本当に最高だな!と隣の人の肩をバンバンせずにはいられなかったよ(一升瓶を抱えながら)。アンコールで披露された「THE FOG」はもう完全に20年代の「永遠なるもの」でしょこれ…という気持ちになってしまい滂沱の涙を流していた。


それにしても、田中ヤコブと家主をはじめ、台風クラブや本日休演…NEW FOLKから作品をリリースしているアーティストは皆どこか不器用かつ厭世的な空気をまといつつも、それでもポップミュージックの革新と普遍を真摯に追求しようとするストイシズムを漂わせている。あらかじめ失われた世代が、焼け野原みたいな2020年で鳴らす希望。こういうミュージシャンがいること自体になにか勇気づけられるような気持ちになるのです。