ドリーミー刑事のスモーキー事件簿

バナナレコードでバイトしたいサラリーマンが投げるmessage in a bottle

Sons of Nice Songs Vol.2を開催しました!

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関美彦さんとさとうもかさんにご出演頂いたSons of Nice Songs Vol.2、無事終了しました!

寒い中ご来場頂いた皆さん(遠く埼玉から来てくださった方も!)、K.Dハポンの皆さん、気にかけて応援して下さった皆さん、本当にありがとうございました。


なかなか自分のイベントを客観的に振り返るというのは難しい、下手すりゃ不粋なものではありますが、まあ書くわけですよ。だってわたしだもの。

 

今回は14時開演、お昼に開催しました。

その理由は二つあって、一つはお子さんがいらっしゃる方でも気軽に来てもらえるようにということ。

もうひとつは冬の午後のハポンのムードが、きっとお二人の歌にぴったりだろうと思ったからなんですが、サウンドチェックの時にもかさんのギターに窓からの薄い光があたってる光景がとても美しく、どこか外国の教会みたいだなぁと思ってしまいました(外国の教会、行ったことないですけど)。

 


最初に登場頂いたのはさとうもかさん。

1時間たっぷりもかさんの歌が聴きたいという私の思いをくみ取って準備してくれたセットリストはなんと16曲。しかも新曲まで!

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アルバム「LUKEWARM」に収録された「OLD YOUNG」「ひみつ」からスタートしたライブ、まずはピアノの弾き語りから。

愛らしい古いウーリッツァーの音色は、もかさんの親しみやすさと上品さが同居したメロディとの相性がバッチリで、いきなりグッと引き込まれてしまう。

 


この日見に来てくださった名古屋在住のSSW・かわにしようじさん(トロエッパ)のお言葉を借りるなら「歌の後ろにオーケストラの音が見える音楽」。

そう、思わずうっとりするほど豊潤で想像力をかきたてられる音楽なのですよ…。

 
と思いきや、一転ギターに持ち替えて歌う「Weekend」は、疾走感あるメロディに、ワーキングクラスの若者の苦悩をユーモアを含ませながら描いていくナンバー。

やっぱりザ・コレクターズやシンバルズ、そしてスカートといったひねり系ナイスポップの系譜に連なるセンスを感じてしまう(しかしご本人はコレクターズは聴いたことがないとのこと。なんという天賦の才)。

 


そしてここから今度は「最低な日曜日」「殺人鬼」とミリオン級のフックを持った名曲をたたみかけ、ヒットチューンメーカーとしての片鱗を見せつけてくれたわけだけど、この日披露してくれたできたてホヤホヤの新曲「ネオン」は、その側面におけるさとうもかの評価を決定的にするのではないか、という気がした。

力強く訴求してくるメロディーと、男女の心理の本質を射抜くドラマチックな歌詞、そしてファンキーでコンテンポラリーなビート。

もう早く誰かドラマの主題歌にした方がいいよ!と声を大にして言いたい。

 


そして中盤の個人的なクライマックスをあえて挙げるならば、ギター一本で披露された「友達」でしょうか。

なにも具体的なことを書いてないのに、なぜかすべてをわかってしまう歌詞が、血が流れるよう切なさを聴き手に運んでくる様に圧倒され、会場の隅で静かに震えておりました。

 


さらに最後はまるでディズニー映画のテーマソングのような輝きを放つ「Wonderful Voyage」と、Spotifyでも再生回数No.1のキラーチューン「Lukewarm」で、名曲だけの、本当に名曲だけの60分はあっという間に終了。

 


ピアノ、ギター、PCを駆使して、大人から子供までみんなのハートを暖かくしてくれたもかさんの心意気に、ファンとしても、主催者としても、滝のような涙を流さずにはいられませんでした。

今回見逃した方も、来年は絶対に目撃して頂きたい、早くもっと多くの人の耳に届いてほしい、と心から思っております。

 


なお、会場にいたキッズ二人にもかさんのお気に入りの曲を尋ねてみたところ「恋をしたら人間になっちゃう曲(「Lukewarm」ですね)」、「隣の人が悪魔のやつ(悪魔じゃなくて「殺人鬼」ね)」とのことでした!

 

 

さて、午後の太陽が傾き、マジックアワーの気配を感じはじめた時間帯に登場するのは、シティポップの裏番長、東京のチャーリー・ブラウンこと関美彦。

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赤いベースボールキャップを被った華奢な彼が、ハポンのピアノの前に座る姿に、これだけでもう芸術と呼んでいいのでは、と胸が熱くなる。

このハポンの大きな壁に、もかさんと関さん、美しいピアニストの影が伸びていく光景。

これが見たくて今日のイベントを企画したのかもしれない、と思った瞬間でした。

 


と、そんな私の高まりすぎたテンションを軽くいなすように、まだ歌う前から名古屋の思い出(20年前ローラ・ニーロを見に来た時に大須で食べた赤だしのみそ汁がおいしかった、等)を飄々と語り出す関さん。

さすが大人である。

 


しかしひとたびピアノの鍵盤を叩き、その歌声をマイクに乗せれば、そこはもう名古屋でもライブハウスでもない、白昼夢の世界。

一曲目の「HAWII」から、寄せては返す波のようなピアノが創り出す異次元の美しさに、頭が真っ白になりそうになってしまう。

 


夢見心地のまま「Desert Rose」、「王様と猫」に続いて披露されたのは、アルバム「SEX, LOVE &SEA」の冒頭を飾る超名曲「BLUE」。

私はアーティスト本人が選んでくれた曲を演奏してもらうのが一番いいと思っているので、これまで誰にも特定の曲をリクエストしたことはないけれども、この曲だけはできれば…と喉元まで出かかっていた一曲(ちなみに音源では TB-303が大胆に用いられており、これを私は世界で一番エロい303の音だと思っている。関さんに伺ったところ、303を使うアイデアはプロデューサーである曽我部恵一氏の発案だったそう)。

 


ああこの甘い時間が永遠に続けばいい…と思ったその刹那、曲の終盤にきてピアノと歌がもつれていく。

どうやらピアノの不調により、低いキーの鍵盤の音が出なくなってしまったらしい。


大好きな曲でこんなトラブル、普通なら落胆し、主催者としての責任も感じなければならないのだけれども、この残酷な結末すら、関美彦のつくりだす繊細な世界においては、ある種の美しさを帯びているように思えてならなかった
まるで誇り高き往年のフランス車のような美しさと、そこに潜む未完成の危うさ。

これこそが関美彦の音楽と安全で高品質なポップスとを隔てる一線であることを、あの場にいた人ならきっと分かってもらえるのではないかと思う。

 


MCを挟み、続いては現在進行形の関ワークスから二曲。

一曲目はWAY WAVEに提供した「SUMMER GIRL」。

そしてもう一曲が広瀬愛菜(もともとは柴田聡子と滝沢朋恵のユニット・バナナジュース)に提供した「さよなら こんにちは」。

 


どちらも彼のクリエイティビティがいまだ全盛期にあることを示す、キラキラした輝きを放つ名曲。

そして女性アイドルが歌うための楽曲に乗せてもまったく違和感のない、少年のようなミラクルボイス。なんて魔法的。

 
しかしそこに対照的なMCの軽妙さもまた、関さんの魅力。

「今日、実はドラムの北山ゆうこさんとベースの伊賀航くんにも一緒に行こうよって声かけてて、北山さんはオーケーだったんだけど、伊賀くんの都合つかなくて」なんて恐ろしいことをサラッとおっしゃったり、

「さとうもかさん、素晴らしかったですね。なんで若くしてあんなブロードウェイみたいな曲が書けるのか聞いてみたいですね。まぁだからと言ってご本人とは親しく話したりはしないんですけどね」とカマしてみたり。

(ちなみに終演後は親しくお話しされていました)。

 

そしてライブは後半に突入。

ディオンヌ・ワーウィックのカバーに続いて披露された「Bloody Rain」が、終盤の白眉。

音楽ライター北沢夏音氏が「東京の歌50選」にはっぴいえんど荒井由実小沢健二など錚々たる面々と共に選出した、3.11以降の街の片隅で暮らす私たちのささやかな物語2020年に向けて都市のあり方が大きく変わる今こそ、大切に聴かれるべき歌だと心から思う。

 

こうして、もかさんと同様に名曲だけの60分は「Country Man」の永く響くピアノの余韻を残して終了。

ピアノと歌だけのシンプルなライブなのに、今まで味わったことのない、濃厚な時間を過ごしてしまった。

そんな気持ちになりました。

 

 

 

以上がSons of Nice Songs Vol.2のダイジェストとなります。

もかさん、関さん、世代の異なる二人のポップマエストロの共演の一端を感じてもらえれば、と思います。

 

改めてお越し頂いたお客様(皆さんいい方ばかりで…)、関さん、もかさん、ご協力頂いた方々に御礼申し上げます。

(あ、あと私の酔狂をいつもサポートしてくれる家族にも…)

 

次回の予定は未定ですが、またいつかどこかで面白いことがやれたらいいなと思っております。

 

 

最後に蛇足として、私の選んだ当日のBGMを記載しておきます。

皆様の冬が良いものでありますよう。

 
<BGM for Sons of Nice Songs Vol.2>

1.ジムノペディ 曽我部恵一

2.Tired Of Waiting For You Larry Page Orchestra

3.Sesso Matto ArmandoTrovaioli

4.Just Like Me The Spencer Davis Group

5.A World Without Music Archie Bell & The Drells

6.Vanishing Girl The Dukes Of Stratosphear

7.Father Christmas The Kinks

8.Children Go Where I Send You Nina Simone

9.流星ビバップ 小沢健二

10.Walk Out To Winter Aztec Camera

11.Four Leaf Clover Badly Drawn Boy

12.The Drifter Roger Nichols & The Small Circle Of Friends

13.スライド Flipper's Guitar

14.Big Day Coming From Northwest Citrus

15.Some Things Last A Long Time Daniel Johnston

16.Ghost Mouth Girls

17.Twilight Madness DSK

18.Jealousy James Iha

19.It's Too Late Carole King

20.雨降夜行 金魚注意報

21.Light Upon The Lake Whitney

 


※蛇足の蛇足

一曲目の「ジムノペディ」は関さんの「Guitar Girl」という曲でめちゃくちゃカッコいいブレイクビーツの上にフィーチャーされてて、たぶん曽我部恵一氏のアイデアだと思うんですが、オマージュの意味を込めて選びました。ぜひどちらも聴いてみてください!