「夫のちんぽが入らない」を読みました。
この本の良さは、夫のちんぽが入らないというセンセーショナルなカミングアウトにあるのではなく、「まともな人が出てこない」という点にあるんじゃないか、というのが私の感想です。
極端に不器用な性格の主人公、いきなり人の部屋に上がり込んでくる夫、山をオカズにナニしちゃう人、説教しながら目隠しプレーする人、宗教にハマって集団生活してる人。
みんななにかしらのイビツさを抱えながら生きている。
そう言う俺だって、外形上は真面目な会社員あるいは良き父親ととして生きているものの、その内面には「夫のちんぽが入らない的事案」、つまり人には言えない問題の一つや二つくらい余裕で抱えている。
もしその側面だけを切り取ってみれば、この本に出てくる、「まともじゃない人たち」と同じ列に並ぶことになるのだろう。
だからこの社会の片隅で、自分と自分の癖に精いっぱい折り合っていく(©Tokyo No.1 Soulset)しかないのだ。はみ出さないように。誰にも弱みを見せないように…。
でもこの本を読むと少しだけ、その思い込みから抜け出すことができる。
まともじゃないけどなにか?と開き直りたくなる気持ちが湧いてくるのだ。
だって真面目に学校出て、教職という堅い職業に就いたこの主人公だって、これだけの「まともじゃない人たち」とすれ違っているんだもの。
むしろ「まともかどうか」というぼんやりした尺度の方が幻想なんじゃないのか。
夫のちんぽ的事案を心の中に飼っていない人なんていないんじゃないか。
イビツだっていいじゃない、人間だもの。
ちなみにこういう気持ちを必要以上にでっかくしてドヤ顔しちゃったのが、
「世界中の万引き犯よ、団結せよ」(Shoplifters of the world
unite )と歌った時のモリッシーなのかもしれないと思ったけど、万引きはダメゼッタイだし、モリッシーは最強すぎる。