土岐麻子「PIINK」に大人の本気を感じた件
土岐麻子の新作「PINK」が素晴らしい。
思えば、これまでの彼女の作品には、ハイクオリティーかつ、いい意味での余裕と言うか、あらかじめ消費されることを想定した余白のようなものが準備してあったように思う(それがシリアスすぎる音楽ファンとの距離感に繋がってた気もする)
でも、今作では肉体的なアカペラとオートチューンの組み合せも象徴的な一曲目の「City lights」からして、人工的な都会の風景を、現代人にとっての信仰の対象にまで昇華させたような荘厳さがある。
そして矢継ぎ早に繰り出される「pink 」「valentine」あるいは「Rain dancer」の最新型のダンスビートの力強さ、たたみかけられるメロディの切実さに、この街を、この時代を生き抜いてやる、という覚悟を強く感じるのです。
その一方で、リアルな女性心理(と、オッさんが言うのもアレですが)を克明に描く、歌詞におけるストーリーテラーぶりも健在で、これまでと同じだけの間口の広さもしっかり確保。
ユーミンも吉田美奈子も一十三十一も全部引き受けるわよ、というクィーンオブシティポップの貫禄。
かっこいい大人の女性とは、私のようなくたびれ男の背筋をも、しゃんとさせてくれるものなのだ、とシビれた次第です。