ceroのライブに行ってきました。
思えば私が東京インディーおじさん街道を千鳥足で歩くことになったのも、去年の6月、ここダイヤモンドホールでceroのライブを観に行って、高城さんの「東京インディー物販戦争、ミツメには負けないぞ」というMCがきっかけ。
「そういやあの時のミツメってどんなバンドなんだ?」と後になってApple Musicで探し当てたのが全ての出発点だったわけです。
そこからの1年半を振り返ってみれば、ずいぶんと遠くにきたものである(酔っ払いの徒歩にしては)。
なのでceroのライブは私にとっていわば原点、と張り切ってダイヤモンドホールに。
いやだがしかし。
無かったよ、原点。
もうとっくに遠く離れた場所に飛んでいってしまっていたよ、ceroは。
と、呆然となるようなライブでした。
まず一曲目、のっけから「I found it back beard」で濁流のようにおしよせるような多幸感。
そして「Yellow magus」「Summer soul」の流麗かつタフな演奏。イントロのフルートの力強さにいきなり感極まる。
なんだろうな。
レコードと同じアレンジなはずなのに、なんかもう違う曲に聴こえるぞ。
スケール感がヤバいんだ。
そこからさらに前作"Obscure ride"からのセットリストが続く。
特に「Elephant ghost」での鉄壁のミュージシャンが入れ替わり立ち替わり、くっついたり離れたりしながら作り出す、影の色が濃厚なグルーヴは圧倒的。アーバンなのに未開の地に伝わる呪術のような妖しさ。
そして「Orphens」での光永渉のハネながらも歌に寄り添うようなドラム。
ふと小沢健二の名盤「犬は吠えるがキャラバンは進む」における故・青木達之を思い出した、ということは、超個人的な備忘として書いておきたい。
なお、ベース・厚海義朗を紹介する時の
「名古屋、いや日本で最高のバンド・Guiroでも活躍中」という高城さんの言葉は120%真実なので、まだ未聴の方は絶対に聴いてみて頂きたい。
そんな既発曲のアップデートだけで、私の脳内メモリはもういっぱいいっぱいだったのだけれども、この夜の白眉は、ここからさらに高みに登らんとするceroの求道的な演奏。
ナックルボールのように揺れるビートに、メロウでヒンヤリとしたデュルッティコラムのようなギターが印象的な新曲「ロープウェイ」。
YMOを彷彿とさせる無国籍なシーケンスから始まり、定石から外れ続けるメロディが続く「予期せぬ」。
市井に暮らす一人ひとり刹那を切り取って、ブレイクビーツに並び替えてしまったような「街のしらせ」。
ありていに言ってしまえば、こんな音楽聴いたことないし、こんなバンド見たことないぞ、ということに尽きる。
よってあの日、その魅力の全てを受け止めたとはとても言えないんだけど、「My lost city」から「Obscure ride」への飛躍と同じくらいの進化が、いま目の前で繰り広げられている、ということはビビっと伝わってきた。
ポップミュージックが更新される瞬間っていうのはこういうものなのか、と。
というわけで、今日も会場で手に入れたシングル「街のしらせ」を繰り返し聴きながら、霧のようにあいまいな余韻の中にいるのです。