ドリーミー刑事のスモーキー事件簿

バナナレコードでバイトしたいサラリーマンが投げるmessage in a bottle

現代を生きる一人ぼっちのための、心優しいブルーズ。スカートの最高傑作"Call"について。

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キテる!
キテるよ、澤部君!!

と、知り合いでもなんでもないのに背中をバシバシ叩きたくなるような全国的なスカートフィーバー。


ワタシのようなにわかファンでもこんなに盛り上がってしまうのだから、長年応援してきた皆さんの気持ちたるやいかに、と言ったところ。


でも、この一連の愛ある炎上は、決して今をときめくカクバリズムからのリリースだからとか、Mステに出たから、という理由だけじゃないと思う。


なんとかスカートの音楽を一人でも多くの人に聴いてもらいたい、と思っていた人たちみんなが、「乗るしかない、このビッグウェーブに!」と、小さなウチワをあおぎまくった結果、愛の火柱が上がったんじゃないか、と。


だって、レコード屋さんの手書きポップも、ツイッターも、ブログも、みんなちょっと普通じゃない筆圧の高さだもの。


そう。
スカートの音楽には、なにかこう、ムキになって応援したくなるものがあるんですよ。


さて、そんなファンの熱すぎる想いと喧騒に迎えられた最新作"Call"。

今さらワタシが言うまでもなく、間違いなくスカートの最高傑作です。

最高傑作なんて、最新作には必ずつく形容詞だと思われているかもしれないけど、まさに名曲だけの12曲36分は、スカート史上最も深い余韻をあなたの心に残していくこと間違いなし。


一人ひとりの心の形を丹念になぞって上下するような、どこまでも繊細で、時に複雑なメロディと歌詞(まだ高みがあったのか、と言いたくなる)。

楽曲に込められた切実さやユーモアを、さらにドライブさせるバンドの演奏(特にベースがツボ)に加えて、徳澤青弦、ゴンドウトモヒコといった大物ミュージシャンによる彩り豊かなストリングス、ホーンアレンジ。

そして、今までよりもグッと各パートの音像がクリアになり、奥深さと親密さが増した録音。


どれをとってもネクストレベルと断言できる。



その中でも一番ワタシがグッときたのが、澤部氏のボーカル。
 今までは少し弱いかも、と思っていたんけど。


何が素晴らしいって、何も変えていないところが素晴らしいんですよ。

いや、ふざけてないですよ。


だって、ポップス職人・澤部氏のこと、グッドなメロディ、ビューティフルなアレンジとくれば、次は精巧なコーラスワークといくのが自然な流れってもんじゃないですか。

でも、ワタシが聴く限り、このアルバムの中で澤部氏自身の声が重ねられているのは2曲目"Call"の、とてもシンプルなハーモニーのみ(たぶん)。

もっと派手に、もっと上手く聴かせることもできたはずなのに、今までと同じ、あるいはそれ以上に、一人であることをあえて強調するような、生々しい歌声と、録音。 


もしかしたら普段、ヒットチャートのポップスを聴いている人は軽い違和感を抱くかもしれない。


でもワタシは、ここにこそ、澤部氏の矜持を感じる。

たとえ窓の外がどんなに騒がしくなったとしても、本当の俺はいつでも一人ぼっちだし、同じく一人ぼっちのあなたの耳と心に向き合う。
それがスカートの音楽なんだぜ、と言っているような。


いや、ちょっと妄想膨らみすぎかもしれませんけど。


でも、今までもこうやって真摯に、聴き手一人ひとりと、一対一の関係を作ってきたからこそ、こっちもムキになってポップ書いたり、ツイートしたり、長々とブログ書いたりしちゃうんだと思うんです。

そういう関係性すらも、この歌声に凝縮されている気がして、グッとくる。とても深く。



というわけで、

この、現代を生きる一人ぼっちのための、心優しいブルーズが、どうか少しでも多くの人たちに届きますように。
きっとこの音楽を必要としている人はたくさんいるはずだから。

と願う今日この頃なのです。