ドリーミー刑事のスモーキー事件簿

バナナレコードでバイトしたいサラリーマンが投げるmessage in a bottle

ストレイト・アウタ・コンプトンで気合いを注入されたある日

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出張先で取引先にどつき回され、すっかりクサクサした気持ちになってしまったくたびれサラリーマンのワタシ。


ウサ晴らしにキャバクラへ!という健全な中年男性的感性は持ち合わせていないので、ちょうど通りがかった映画館にイン。


ちょっと気になっていた、"ストレートアウタコンプトン"を今さらながらに観ることにしました。

内容はよく知らなかったんですけど。


そしたらもう、のっけからこちらの想定を上回って繰り広げられるスリリングなドラック、セックス、バイオレンスシーンの連続に、すっかりアウアウ状態に。


初めてのキャバクラに入ったらお会計でヤクザが出てきちゃった時ってこんな気分なのかなー、とか思ったり思わなかったり。



映画のストーリーはいたってシンプル。

80年代後半、荒廃したストリートの赤裸々な描写、歯に絹きせぬ権力批判etc.で社会現象を巻き起こしたギャングスタラップの始祖・N.W.Aの栄光と挫折を、Dr.ドレー、アイス・キューブ、イージー・Eの3人を中心に描いたノンフィクション。


「N.W.A? Death Row 聞いたことはあるけど…」という程度の知識しか持ち合わせていないワタシでも、2時間半まったく飽きることなく楽しめる、エンタメ感溢れる脚本と演出。

さすがハリウッド、といった感じであります。

音楽好きとしては、特にN.W.Aのライブシーンの迫力にやられました。再現シーンであることをすっかり忘れて盛り上がってしまう臨場感。
(そして、レコーディングシーンで登場するSP1200、TR-808、JUNOといったビンテージシンセの数々にも密かに興奮)


最初はビビったけど、観に行って良かった。


しかしやっぱりハリウッドだなぁと思うのは、ノンフィクションとしての客観性を保っているように見せつつも、善人悪人の区別をハッキリ分けて描かれているところ。
ブライアン・ウィルソンの"ラブ&マーシー"ほどじゃないけど)


なんでもナナメに見るワタシとしては「で、実際のところはどうよ?」とか聞きたくなっちゃうわけで。



なので、主要な登場人物の分類と、彼らの現在の状態をざっと整理してみました。


<悪人>
 N.W.Aマネージャー ジェリー・ヘラー ←没落
 
Death Rowレーベル社長 シュグ・ナイト ←破産&殺人容疑で起訴

<多少のヤンチャ(違法薬物の売買等)はしたけど根は善人)>
  イージー・E ←死去

<善人>
 アイス・キューブ ←映画・音楽の世界でそこそこ活躍中

<どんな誘惑にも惑わされることなく音楽づくりに邁進した家族思いの聖人>
Dr.ドレー←アップルに3000億円で自らのヘッドホンブランド・ビーツを売却、世界で最も高収入のミュージシャンの一人。


うーん。

やっぱ現在の保有資産、あるいは生きてるか死んでるかによってキャラ設定が決まってるんじゃないの?という気持ちがどうしてもぬぐえません。


だってよく見たら、この映画のプロデューサー、アイス・キューブとDr.ドレーなんだもの。


この映画のどこが真実で、どこが誇張なのか、一見客に過ぎないワタシにはまったく分かりませんが、巨大な成功を収めた人間は歴史すらも自由に編纂できるというワイルド具合に、モノホンのストリートワイズを感じました


とりあえず、

①死ぬな!
②ムショに入るな!
③音楽を愛せ!
④いつかつかむぜビッグマネー!

という、Dr.ドレーさんからの超ファットなメッセージはしっかり胸に刻みたいと思います。


でも、悪徳マネージャーとして描かれたジェリー・ヘラー氏は、この映画を観て、裁判を起こすと息巻いているそうで、さすがアメリカ、負け組もたくましい。



大成功も大失敗とも無縁な平凡サラリーマンの俺も、もうちょっと気合い入れて、とりあえず明日は例の取引先をぶん殴ってやろうと思います。