ドリーミー刑事のスモーキー事件簿

バナナレコードでバイトしたいサラリーマンが投げるmessage in a bottle

スカートは21世紀のシュガーベイブなんじゃないか、という話

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スカートのCDが届いた。


"ひみつ"と"First Waltz Award"の2枚。



なんでこの二枚をチョイスしたのかわかんないんだけど、あの時はとにかく焦って注文したから仕方ない。



ところでスカートって、てっきりバンドだと思ってたら、澤部渡さんという方のソロプロジェクトだった、ということを最近知った。


しかも、もともとは一人で宅録してて、レーベルも1人で立ち上げた、と。



わたくしごとですけどね、当方もこの1年以上、会社じゃ毎日ボッチ飯なんでね、がぜん親近感わきましたよね。この人も友達いないのかな…って。




はい。
そんなことはどうでもいいとして。

まず、"ひみつ"から聴きました。


もう1曲目の"おばけのピアノ"の冒頭8小節で完全にもってかれましたね。


パッと聴いて「あ、俺このバンドには抗えないな」っていうガツンとした瞬間ってあるじゃないですか。ないですか?あるんですよ俺は。

と言うか、その瞬間のために新しい音楽を探し続けてると言ってもいいです。



とにかく、久々にきましたね。これは。


超個人的な経験で言うと、椎名林檎のファーストアルバム1曲目"正しい街"の最初のコーラスを聴いた時の感覚に似たセンセーション。


どちらもメロディーと歌詞、それを支えるベースラインに強い説得力があるから思い出したのかも。



それはともかく。



なによりまず、日本の良質なポップミュージックの歴史をギュッと凝縮したようなメロディセンスがヤバい。もう今までに言い尽くされてることなんだろうけど、俺ももう一回言わせてもらいます。





錚々たるミュージシャンの顔が浮かぶんだけど、そういうミュージシャンのフォロワーと呼ばれた人たちは星の数ほどいるわけで。


そういう星の数ほどの彼らが知らない、本当の天才だけが知るメロディーのツボのようなものを知ってる気がするんです、この澤部さんは。



しかも、さすが一人ユニットだけあって、アレンジがメロディーと一体になってるから、心と身体が一緒にスウィングしちゃう気持ち良さがある。ジャック・ペニャーテ的な。



いずれにせよ、世が世なら普通に500万枚くらい売れるべき人なんじゃないか、と思います。




それでいて、その珠玉の楽曲を良い意味で放り出せるというか、大事にし過ぎない、ロック魂、パンク精神、もしくはある種のやけっぱち感も感じるんですね。

これ、500万枚には関係ないけど、個人的にはすごく大事なこと。




でも一方で、この録音物で(2枚しか聴いてないけど)、彼の才能が100%表現されているかと言うと、全然そんなことないと思ってしまうのもまた事実なわけで。


歌と演奏と音質のクオリティがもう少し上がれば、今の10倍くらいの人達にすぐ届くのに…と。


こういう発想が、いかにもしみったれたサラリーマン的なものってことはわかってますよ。




でも絶対にもっとやれる子ですよ、渡君は。
そして本人もきっとそう思ってますよ、お母さん。



たぶん、この人は自分の才能に見合うだけのコストをかけられる環境で、音楽を作っていないと思うんです。



そういう類いのもどかしさを抱えているという点では、これは21世紀のシュガーベイブってこと、かもしれない。

山下達郎がまだ山下達郎になる前の姿、という意味で。



ついでに言うと、ギターのカッティングがメチャ気持ちいいのも一緒だし、歌詞の中にも"雨は手のひらにいっぱい"ってフレーズが出てくるし。





だから俺は言いたいよね。

"Songs"の40周年リマスター盤とか買ってる小金持ちのオジさまたちに。



その金で、スカート買おうぜ、と。


だってそれ、どうせ通算3枚目くらいの"Songs"なんでしょう?

それ聴いて「あぁ、一度でいいからシュガーベイブのライブ観てみたかった」と思うわけでしょう?


だったら、そのポケットの小銭は、21世紀の山下達郎が誕生する瞬間に立ち会うことに賭けた方が、ロマンティックでロックンロールじゃないかい?



山下達郎と同じくらい、売れる理由(と売れない理由)を持った澤部渡がどこまで行けるのか、みんなで見届けようぜ!!!





…また勝手に盛り上がっておかしなことを書いてしまった。

こんなブログを読んでる小金持ちのおじさんなんていないのに…。



もし俺がIT長者とかだったらポンっとレコーディング費用出したいところなんだけど、申し訳ないほど庶民でゴメン。

他の音源もちゃんと買うから許して。



でも最後に言っておくと、ライブ盤の"The First Waltz Award"ってタイトル、コーネリアスのファーストアルバム"First question award"と小沢健二のライブビデオ"First waltz"のタイトルをくっつけただけだよね?


そういう投げやり感、スリリングでいいと思うんだ。