ワタシにとって、大阪という街には心理的に高い壁がある。
「東京生まれモリッシー育ち、ヘンクツそうなリベラルはだいたい友達」という俺とは文化的・政治的にまったく相容れない、という先入観がある。
そんなリズムアンド暴力の街で、ヴォルフガング・ティルマンスの写真展を観てきた。
とは言え、いくら世界のティルマンスとは言え、わざわざ休日に子どもを預けて(局部ベロン系の写真があるかもしれないから)、遠く大阪まで見に行く価値があるのか分からなかったけど、しばらくはアートと音楽に全点ベットすると決めた以上、近鉄に飛び乗る選択肢しか残っていなかった。
というわけで、とりあえず結論から申し上げましょう。
最高でした。
写真展も大阪の街も。
まず写真展。
すごいボリュームでした。
さすがにあれだけ大量に見れば、彼の世界観が分かった気になるというか、ティルマンスの目線が自分に憑依してくるかのような気分になるというか、イタコ感覚がカジュアルに味わえるというか。
ありふれた瞬間からは普遍的な美しさを、遠大な風景からは身近さを、無機的な人工物からは人間性を。そして、親密なものからは親密さを。
そういう背反したり矛盾したり見過ごされたりする感覚が、フレームギリギリまでを使った写真と、大小様々なフォーマットの展示で表現されて、こちらの凝り固まった感覚が揺さぶられていく。
特に、「大阪真実研究所」と題されたニュース記事の切り抜きと、ティルマンスの写真がドワーンと部屋いっぱいに展示されたスペース。
足を踏み入れた瞬間、なんか胸がいっぱいになりましたよ。
「目に見えるものも目に見えないものも、全部ひっくるめて現実の世界なわけだけど、そこで君は何を見ようとしてるんだい?」と、俺に乗り移ったティルマンスが尋ねてくるような。
とにかく「俺、今、世界の渦のど真ん中にいる!!」という気分になったんですよね。
ま、完全におかしいこと書いているという自覚はありますが、とりあえずそう思ったもん勝ちかなって思ってる。
でも、局部ベロン系の写真はなかった、というのは間違いなく正しい情報。
さてその後、すっかりボワーンとした頭で目指したのは、The New World。日本語で言うと新世界。
もっともワタシが苦手とするザ・大阪、と言ってもいい。
しかし虎穴に入らずんば虎子を得ず、なのである。
目指すはこの記事を読んでからずっと気になっていた「酒の穴」。
道場破りにはもってこいの店である。
店に入って、しみったれた先輩よろしく、同行者に「なんでも好きなもの頼みや」と言ってみるも、300円以下のメニューばかり。
しかもどれも美味い。
お店の人も親切。
地元の人と混じって阪神戦をテレビで見ながら玄人なレモンサワー(やけに焼酎が濃い)などを飲み、すっかり楽しい気持ちになる。
いやぁ、ええやん大阪!!
また来るで。
その頃はもっとマシな市長と知事だとええな。
以上、夏の終わりの小旅行レポート。
なお、帰りの電車の中で切符を無くしたのはまた別の話ということで。