ドリーミー刑事のスモーキー事件簿

バナナレコードでバイトしたいサラリーマンが投げるmessage in a bottle

Lee & Small Mountainsのラストライブを観た話。

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リースモの音楽とは、キリンレモンである。

 

さわやかな甘さとほのかなすっぱさ。それでいてパンチのある炭酸が効いていて。なによりも、いつ飲んだって絶対に美味しい。

あまりにもさりげなく、優しい面持ちでいてくれるものだから、刺激的なコピーを引っさげて現れる新製品の前では控え目に見えるかもしれないけど、まあ一口飲んでみてくれよ。やっぱこれだな!という気持ちになるから。


そんなリースモ、略さずに言うとLee &Small Mountainsという名前の最高にイカしたプロジェクトが、その看板を下ろすという。

今から3年前、彼らの7インチ「Teleport  City」に出会って心を躍らせ、ついにはリー・ファンデ本人のライブを企画するくらいに人生を変えられてしまった者として、この節目のライブは絶対に目撃したいと願っていたのだけれども、やっぱ神さまっているのかもしれない。なぜか俺はその日、下北沢はモナレコードにいたのだよ。

 

開演からだいぶ遅れて会場に到着すると、ステージではちょうど対バンのSaToAが演奏を始めるところだった。

去年ハポンでライブを初めて観て以来二度目。


名作 「スリーショット」からのナンバーが中心だったこの日もライブも、ソフトロックなハーモニー、その裏側からチラッと見えるパンクな鋭さとソウルの熱さがかっこいい。


こうした過去の音楽的遺産をセンス良く参照していくスタイルの音楽をこの時代に表現しようと思うと、DJや打ち込みの方が自然のように思えるのだけれど、あえてバンドで、しかもスリーピースで、という意思こそが、彼女たちにしか放つことのできない輝きの根源にあるように思えた。


(この時点では)まだ発売前の新譜からの曲も聴けたのだけれども、どこかオルタナ感のあるメロディーが新鮮で、彼女たちの音楽が届く射程距離がぐっと伸びるような気がした。

そしてワタシは、この繊細だけど確かな光を、いくつになっても感じられる人間でありたいと強く思いましたね。

 

さて、続いて登場するのはこの日の主役、Lee & Small Mountains。バンドが演奏するソウルフルなイントロダクションが鳴り響く中、客席後方から(プロレスラーのようなスタイルで)入場してきたリー・ファンデ。

長い手足をスーツに包んだ姿が実に精悍。


学生時代から名乗ってきたリースモ名義のラストライブということで、きっとこれまでの集大成的セットリストになるのだろう…と勝手に予想していたのだけれども、この日の本編は一曲を除いてすべて未音源化の新曲。


「カーテンナイツ」からはやんないのかい!とツッコミつつも、ソロアーティストとしてのリー・ファンデの第一歩を刻みたいという意気込みや良し。やっぱソウルボーイはこうでないと!


その新曲たちは、これまでのソウルをベースにした路線を踏襲しつつも、よりポップな彩りと、メロディーの力を重視しているような印象の曲が多いように思える一方、スティービーワンダーの「Superstition」を下敷きにしたであろう重いファンクナンバーもあったりして、来るべき次作の充実をギンギンに予感させてくれた。


さて実は私、リースモをバンドで観るのは実はまだ2回目でして、1度目は野外のイベントだったこともあり、じっくり堪能したのは今日が初めてと言ってもいいんですが、この地に足の着いたグルーヴが実に気持ちいい。パーマネントなバンドじゃないというのが不思議なくらいのステディ感。このバンドで名古屋また来てほしい。


そしてそんな完璧なアシストを受けて聴き手のゴールに迫るのボーカルのリー・ファンデ。

オーセンティックなメロディーに「今・ここ」の切実さを宿らせて、オーディエンスの心の壁を真正面から貫こうとする、熱くて青くて愛に溢れたうた。観るたびにスケールが大きくなっているように思えてならない。

 

最高だ…と感極まったところで時計の針は9:30を指していた。シンデレラおじさんことドリーミー刑事(40歳)、お迎えの馬車が来たようです。泣く泣く本編ラスト曲で会場を後に…。

最終の新幹線の中でアンコールが「Teleport City」「山の中で踊りましょう」だったことを知り、100万バレルの涙で大井川を氾濫させました。


ちなみにLee & Small Mountainsという名前はこの日は最後ですが、今後はリー・ファンデという名前で今日のバンドメンバーと共に活動していくとのこと。


また新たな歌を聴かせてくれる日を私は心から待っております。