ドリーミー刑事のスモーキー事件簿

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青野りえ「パストラル」で東京の歌に思いを馳せる

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2017年に達成することができた人生における野望の一つが、土岐麻子様のライブを観ることだった。

想像通りの歌と演奏の素晴らしさ、そしてお心遣いに溢れたMC。まさにクイーンオブシティポップ。素敵としか言いようがないステージであった。

 

そんな土岐様が帯コメントを書いているのが、去年の10月にリリースされた青野りえ「パストラル」。
青く澄みきった冬の空にとてもよく似合う作品であります。

 

同じく2017年に出た土岐様の傑作「PINK」が最先端のサウンドやトレンドを駆使して「東京の現在」を切り取ったとするならば、こちらはあくまでもトラディショナルなマナー、つまりいい曲、いい歌、いい演奏を貫いて、みんなの思い出の中にあるエバーグリーンな東京を浮かび上がらせている。

 

昨今の7インチブームやシティポップリバイバルとは明確に一線を画す、まるで老舗のテーラーで仕立てたシャツのように端正な仕上がり。ほぼ全曲の作曲・アレンジ・プロデュースを手がけた関美彦の生粋のシティボーイとしての矜持とミュージシャンシップを感じずにはいられない。

 

そこで思い出されるのが、GINZA17年4月号に掲載された「東京の歌 1964-2020」という音楽ライター・北沢夏音氏のコラム。

タイトル通り、二つのオリンピックの間に生まれた東京をモチーフとした歌と都市の関係について書かれた文章と共に「東京の歌 50選」というリストが掲載されており、はっぴいえんどムーンライダーズやピチカート・ファイブにceroといった時代ごとの顔役たちとともに、関美彦の「Bloody Rain」も選ばれている。

 

その文章の中で北沢氏は、「今年こそ日本のポップ・ミュージックの歴史を彩ってきた歌の中から『東京の歌暦』を編みたい」と書いているのだけれども(早く読みたい)、関美彦もまたこの「パストラル」において、2020年に向けて加速度的に姿を変えていく東京の街と歌を、青野りえの伸びやかな歌声に刻み込んでしまおうと考えたのではないかと想像してしまうほどに、ここで鳴る音には豊かな文脈を感じる。

そしてこの充実した仕事ぶりを聴くにつけ、関美彦自身の「東京の歌」が聴きたいのうの思わずにはいられないし、もしかしてその日も近いのでは…という希望的観測も抱いてしまうのです(お願いします)。