先週の雨天続きが嘘のように晴れ上がった空の下で開催された、サニーデイ・サービス19年ぶりの野音ライブに行ってきた。
19年ぶりと言っても、98年も97年のライブも観ていないので、私にとって野音でサニーデイを観るのは初めてのことになる。
ちなみに私が野音に来たのは今回で二度目。
前回は東京No.1ソウルセットのワンマンライブ。しかしこれも99年の話なので、まあやっぱり20年近く前の話。
あの時ステージの背後にそびえ立っていた旧長銀の本店ビルも無くなってしまった。
開場前から集まった満員のファンは、私よりもだいぶ歳上の人達から、同世代の子連れの家族、そして10代くらいに見える若者まで幅広い。
サニーデイ・サービスが長く愛され、また今もなお新しいリスナーを獲得し続けているバントであることの表れだろう。
蝉の鳴き声の中、まだ陽も高い定刻17時ちょうどにライブがスタート。
一曲目は「今日を生きよう」。
久々に会った友達に挨拶をするような、カジュアルだけど心のこもった演奏。
そこから「素敵じゃないか」「あじさい」といった初期の代表曲、そして「8月の息子」「江ノ島」「さよなら!街の恋人たち」のように夏の夕方にふさわしい曲が続く。夏をテーマにした名曲だけでこれだけの量があるということが信じられない。
そしてそんな楽曲たちを、大都会のオアシスとも言うべきロケーションで、3,000人ものサニーデイを愛してやまない人たちと共有している光景の美しさ。
しかし一方で、強欲なヘビーリスナーである私は、今のサニーデイ・サービスが、会場ごとどこか遠くへ連れ去る魔法のようなロックンロールを鳴らすバンドであることを知っている。今日はまだそのモードには入っていないように思われた。
そのスイッチが入ったと感じたのは、ちょうど真ん中あたりで演奏された「海へ出た夏の旅」。
新サポートメンバー・岡山健二によるドラムが印象的で、少しアブストラクトなアレンジに、会場にいる蝉の鳴き声が重なった瞬間、自分が松林の向こうの静かな海に連れて来られたような感覚に襲われ、視界が眩む。
それに続くのは「Dance to you 」のリリース以降、常にライブで更新され続けてきた「セツナ」の熱狂。
ロックンロールというマグマの一番温度の高いところを素手で掴むような演奏に、老若男女が集う客席もこの日一番の歓声で応える。
ほぼ最新作からの楽曲で、これだけ盛り上げるキャリア20年以上のバンドなんて、世界中のどこにもいないんじゃないか。
直後に演奏された「白い恋人」が放つ、逆に20年前に作られたとは思えない、フレッシュでまばゆい光を浴びながら、心と頭が混沌としていくのを感じた。
この三曲の流れが、私にとってこの日最初のピークにして、異次元への入口だった。
しかし、どうしようもなく強欲な私は、俄然熱を帯びていくライブの中にあってもなお、あの最新作にして傑作「Popcorn ballads」からの楽曲がまだ披露されていないということが気になっていた。
フジロックでは「街角のファンク」をC.O.S.AとKID FRESINOを迎えてぶちかましたと聞くし。
でも今日はなんだかそんな流れでもないみたいだな…と思っていたところでついに披露された「花火」。
ナイアガラのウォールオブサウンドのように華やかなアレンジ、雄大なメロディと歌詞がマジックアワーの夜空に吸い込まれていく様が美しすぎて、1コーラス目のサビの時点で涙を拭うのを諦めた(いろいろ書いてるけど、新井先輩のギターが素晴らしかった「96粒の涙」の時点でとっくに涙腺は崩壊していたのだ)。
そしていよいよ本編も終盤。
ちょうど空が真っ暗になったところで演奏された「時計を止めて夜待てば」、そして「24時のブルース」。
静かなメロウネスとささやかな悲しみを湛えたブルーズが、会場にいる小さな子供たちの声やオフィスビルの窓の明かりと重なり、都市のための子守歌のように響く。高野勲が弾くメロトロンによるひんやりとした寂寥感が心地よい。
この曲をこの場所で聴けるなんて…と感慨に耽っていたところに鳴り出したのは「週末」のイントロ。
個人的には99年のライジングサン以来の再会。夏の夜に溶けてしまいそうな儚いメロディはあの時のまま。
でも、
「ゆっくりと だけど確かに おだやかに時は過ぎる
気づいたらもうこんなところなんて 僕なんか思ってしまう」
というサビが、20年前のあの日とはまったく違う意味を帯びていることに気づき、また泣けた。泣けすぎて、もう「サマーソルジャー」ではステージを直視することができなかった。
OFTで聴いた時は「これはいつかみんなでシンガロンしたいぜ」とか思ってたけど全然無理。歌えなかった。
そして本編ラストは「海岸行き」。
ここまでの3曲はアルバム「愛と笑いの夜」とまさに同じ曲順。そうか、ちょうどリリースから20年だったのか…と今さらながらに、この日のセットリストの意図に気づく。
でもそうしたメッセージは別としても、この愛すべき、さりげない曲で、集大成とも言うべき特別なライブを締めてしまうほど底知れない表現力が、この日のサニーデイサービスには宿っていた。
本編が終わり、急いでトイレで顔を洗い、ビールを飲んで、心を落ち着かせてからアンコールに臨む。
本編で感情を大開放してしまったので、もうあとは楽しむだけ。
同じく「愛と笑いの夜」からの「忘れてしまおう」、「夜のメロディ」「青春狂走曲」。
再結成前の代表曲連発に、もうメチャメチャ盛り上がった。
特に「忘れてしまおう」をライブで聴くのは初めてだったけど、なんというカッコよさ。「愛と笑いの夜」における曽我部恵一はモーニンググローリー期のノエル・ギャラガーとタメを張るソングライターだったんだね…とこれまた今さらながらに。
鳴り止まない拍手の中で登場した2回目のアンコールは「胸いっぱい」と、丸山晴茂がドラムを担当した現時点で最後のアルバム「Sunny」から「One day」。
「静かな海辺のような風景 ときどきそこにみんな集まる
知らず知らず吸い寄せられる 何も喋らずにただ涙を乾かす風を待つ」
という歌詞に、今日この場にいることができた幸運、サニーデイ・サービスというバンドを追いかけてこれた幸せを噛みしめた。
またいつか、ここで会いましょう。
ーお知らせー
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(詳しくはまたお知らせします)
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