ドリーミー刑事のスモーキー事件簿

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京都インディー虎の穴「三面楚歌」に行ってきました

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今俺が最も、頼むからもっとその歌を聴かせてくれ!と熱望しているバンド、台風クラブ。 

 

しかしこの一年で出た作品は、全て一曲か二曲しか入っていない7インチかコンピアルバムのみ。

 

しかも4月にリリースされた「相棒」は7インチオンリーだと言うから、アナログプレーヤーまで買いましたよ。

 

このごくシンプルなスリーピースによる、ごくごくシンプルなロックンロールが、何故ここまで俺の心を熱くするのか。

その謎を解き明かすためにGW最終日の夜にやってきたのは金山ブラジルコーヒー。

 

渚のベートーベンズ、本日休演という京都の気鋭3バンドによるイベント「三面楚歌」である。


トップバッターとして現れた台風クラブは、去年の夏に観た時と一切変わらない佇まい。Tシャツにジーンズ、そしておそらくトレードマークである便所サンダル。

この日最初に披露された新曲「春は昔」、続く「ついのすみか」を聴けば、彼らがソウルミュージックからネオアコまで、膨大な音楽的遺産を3分間のロックンロールに封じ込めてしまう、類まれな音楽的咀嚼力を持った三人組であることは明白。

 

そういう意味で台風クラブとは、いわゆる東京インディーのカウンター的存在であり、はっぴいえんどから渋谷系の系譜に連なるミュージシャンと言えるのだろう。

 

そしてその演奏も、去年の夏に観たときよりもさらに骨太で力強いものだった。

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しかし彼らの音楽が俺の心のど真ん中にドズンと飛び込んでくるのは、やはり石塚淳が書く歌詞によるところが大きい。

 

彼の言葉から浮かんでくる、一貫したある情景。

 

それは夢がガラクタへと姿を変えていく様であり、夜風に吹きつけられた情熱が冷めていく光景、遅すぎた夏の終わりをなすすべもなく見送る若者の姿。

つまり残酷なほどの虚無ってやつだ。

この歌詞に何も感じない人を俺は絶対に信用しないぜ…。


ついそんな暴言を吐きたくなるほど、胸に迫る言葉だけを連ねてくる、本当にすごい詩人だと思うのです。


「コンビニに寄って コップ酒持って 線路沿いを歩く   おしゃべりな気分は しばらく続いた勘違いだった   ふいに酔いは覚める   もう分かってるよ 」

 

歌い出しの数行でモラトリアムの終わりを言い表してしまった大名曲「まつりのあと」に改めて聴き入りながら、そんなことを考えていた。

 

そんな彼らの文学性と肉体性がレッドゾーンでぶつかり合う「飛・び・た・い」が聴けなかったのは残念だったけど、夏頃にフルアルバムが出るという噂もあることだし、近いうちにワンマンが観れると信じることにする。

 

 

そしてこの日のイベントで触れておかなければならない嬉しい出会いがもう一つ。


その名は本日休演。

いかにも京都らしい、いかにも京大生らしい、人を食ったバンド名である。

 

毎週FM京都イマラジを聴いている俺なので、その名は知っていたものの、あんなにも芸達者で底知れぬ音楽性を感じさせるバンドだったとは思ってなかった。

 

おっさん的には最初は前半に演奏されたムーンライダーズのカバー「ビデオボーイ」にググッと引きつけられてしまったわけだけれども(彼らが曽我部恵一やスカートも参加したトリビュート盤が素晴らしい)、聴く者の神経に直接触れて筋肉に指示を送るような、台風クラブとは別の意味で肉体性を持った音楽。

本能と計算が絶妙に混ざったステージパフォーマンスもとても良い。

 

終演後、物販でCDを買って早速聴いてみているのだけれども、これがまたライブとは全然違う手触りの音楽だったからビックリ。

 

女の子に興味もないオタクが部室に集まって、おもしろおかしくLSDを作っちゃったようなヤバさ。録音を含めて学生さんがつくった作品とはにわかに信じがたいクオリティ。

 

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なんだか京都に引っ越したくなってきたよ、俺…。