ドリーミー刑事のスモーキー事件簿

バナナレコードでバイトしたいサラリーマンが投げるmessage in a bottle

スカートVS曽我部恵一!世紀のタイトルマッチを観た話。

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スカートと曽我部恵一の共演。

それは私にとって、モハメド・アリVSアントニオ猪木戦にも匹敵するビッグイベントと言っても過言ではない。

と同時に、このシンガーソングライター頂上対決において、どちらも無傷というわけにはいかないのではないか…という一抹の不安も。

その緊張をほぐすため、サイゼリヤでワインを引っかけてから会場へ。

先攻はロック界のモハメド・アリこと曽我部恵一の弾き語り。
かわいらしいネバヤンのフラミンゴTシャツで油断させようという作戦らしい。

しかしその手はくわないぜ。
アンタの手強さはおれが一番わかってるからな…と身構えてみたものの、一曲目の"トーキョー・ストーリー"から、メーターを振り切る歌とギターでいきなりダウンを奪われてしまう。


さすが世界弾き語りチャンピオン・曽我部恵一
この人を好きとか嫌いとか、曲を知ってるとか知らないとかぜんぜん関係なく、会場中の聴衆の心をこじ開けてしまう熱量に、今日もまた圧倒されっぱなし。

この日は"シモーヌ"、"魔法のバスに乗って"といったソカバン期や、"ギター"、"Love sick"のようなソロ初期を中心にした選曲。
サニーデイの甘酸っぱいモラトリアムとは違う、一人の大人として、あるいは父親として生きていくことへの喜びとブルーズに、心の奥がブルブルと震えた。

と同時に、サニーデイ以外でこれだけのセットリストをつくれる楽曲の豊富さに、20年以上の最前線を走ってきたミュージシャンとしてのキャリアと無尽蔵な才能を見せつけられたような思いだった。

いつでもどこでも、必ずこの人はスゴイものを見せてくれます。


さて、そんな曽我部恵一の姿をPA席から真剣な表情で見つめていたスカート澤部氏はこの先制攻撃にどう応えるのか。

と、思う間もなくステージに登場するやいなや演奏スタート。

ファーストアルバム"エス・オー・エス"の一曲目に収録された"ハル"、10年代屈指の名曲"Call"を立て続けに披露し、キングオブメロウロック・曽我部恵一に真正面から挑んでいく。


ちなみに私が今年に入ってスカートのライブを観るのは1月のfever、5月のリゾームライブラリーに続いて3回目なんだけど、今日の演奏のグルーヴはこれまでとは桁違い。
6ピースが一つの塊になってこちらの足腰にグイグイ迫ってくる。

"返信"、"回想"のような激ファンキーチューンはもちろんのこと、"セブンスター"や"ガール"の8ビートや"アンダーカレント"のように大きなメロディを持つ曲であっても、常に身体のどこかしらが動いてしまう。

フロアの一番後ろで踊りまくりながらこの感覚ってなんだっけ…と召喚した作品は山下達郎御大が、1978年にリリースしたライブアルバム"It's a poppin' time"。
圧倒的なグッドメロディ、繊細な心象風景と濃厚なグルーヴを携えた、新しい日本の音楽を作り出さんとする若き梁山泊の記録。

この地下2階のライブハウスで演奏する、一筋縄ではいかないスカートのメンバーと、どこか重なるところがあるではないか。
そう言えばさっきから佐久間裕太の後ろに村上ポンタ秀一の、佐藤優介の後ろには坂本龍一の姿が透けて見えてるし(ウソ)。

しかし、アンコールで披露されたド直球にサマーブリージンな新曲。
コレはいよいよ本気で山下達郎に引導を渡そうとしてるんじゃなかろうかと思ったのは俺だけじゃないはず。
リリースが楽しみすぎる。

というわけで、(思いっきり)泣いたり笑ったりしながらステップを踏み続けたあっという間の一時間半。
俺にとってのスカートとは、まずなによりも最高のロックンロールバンド(あえてバンドと言い切りたい)なんだなということが実感できたライブだった。


そんな感じで名作"Call"の集大成にふさわしい世紀の一戦を見届けた後は、スカート御一行が前日に訪問したという焼き鳥屋さんで泥酔した日曜の夜なのであった。