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ドリーミー刑事のスモーキー事件簿

バナナレコードでバイトしたいサラリーマンが投げるmessage in a bottle

番外編 ピーター・バラカン著 「ラジオのこちら側で」

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名古屋でもinter fmが開局して以来、ラジオはいつも79.5MHzに合わせてある。
(ただし、日曜14時は山下達郎のサンデーソングブックと決まっている)

先日も車で出勤したので、ピーター・バラカンの番組を聴いていたのだけど、ちょうどその日は集団的自衛権の行使容認が閣議決定される前日で、それを憂うリスナーからのメッセージがいくつか読み上げられていた。


当然、そうした意見に反対する人からは、放送内容に疑問を呈するメッセージも届いたのだけど、それに対するバラカン氏の反応はちょっと俺の想像を上回る激しさで、「そんなメッセージがきたら読んでやらないこともないけど、送ってこないでね」という主旨のことを(あくまでも主旨です。言葉づかいは丁寧)言い放っていた。


あんなに大人しそうな紳士に見えて、実は熱い人なんだなと思った翌日に届いたのが、バラカン氏が務めていたinter fm執行役員辞任のニュース。



前日の放送との関係は分からないし、ただ単に予定通りの辞任だったのかもしれないけど、とりあえず、この人のことがすごく気になって読んでみたのがこの「ラジオのこちら側で」。


バラカン氏が70年代に来日してから、これまでのラジオDJとしての仕事を語った本。

とにかく一貫しているのは、「自分で選曲する」ということに対する情熱、欲求。


ビジネスだからと割り切らず、あくまでも自分の本当に好きな音楽を紹介できる場所を求めて、放送業界、音楽業界の現実と戦ってきた人だということを知った。


しかも、その「好きな音楽」も最初はソウル/ロックだったのに、徐々にアフリカ音楽とかに変わっていくわけで、年々自分でハードルを上げてるじゃないですか、と突っ込みたくなるドMぶり。



俺もDJのモノマネをすることがあるし、この「選曲に対する欲求」というのはある程度は理解できるだけれども、それがどこから生まれてくるものなのか、自分でもよくわからないところがあった。


アーティストのように自分の表現・作品を見てほしいというストレートな自己顕示欲でもないし、レコード会社のように紹介した音楽が売れたところで大金が入ってくるわけでもない。
(もちろん、その両者と完全に無縁というわけではないけれども)



この本を読んで、改めてその根っこについて考えてみると、結局のところ「この曲いいでしょ?」という呼びかけに「いいよね」と相手に応えてもらいたい、というシンプルな気持ちしかない、ということに行き着いた。


なので選曲の効能とは、日常の挨拶や会話におけるコール&レスポンスと一緒と言えば一緒なんだけど、そこに音楽という形のない、人の内面に入り込んだものを媒介させることで、より深いところで繋がった気になれるというか、俺たちは一人じゃないんだぜ、ということを確認できるのではないかと。


バラカン氏は(俺も)、そういうことを一生懸命やってるだけなんだなと思いました。



とは言え、バラカンモーニング、あるいはサンデーソングブックでかかる曲の中で俺の知っている曲、あるいは好きな曲がかかる割合は合わせてざっくり30%くらい。


それでも、そんな世界中のほとんどが振り向かない、あるいは忘れてしまった音楽で通じ合えることや、俺よりもはるかに深い、異常なほどのこだわりを持って番組にリクエストを送る人達が日本中にいることが分かると、妙に前向きになるというか、自分が肯定されたような気分になる。

そして、ピーター・バラカン山下達郎は、そんな日本各地に生息する、寂しがり屋のフリークスを代表している「だけ」だからこそ、変わらぬ信頼を得ているのだろう、と思った次第。



ラジオのこちら側で (岩波新書)

ラジオのこちら側で (岩波新書)