ドリーミー刑事のスモーキー事件簿

バナナレコードでバイトしたいサラリーマンが投げるmessage in a bottle

File038:坂本慎太郎"ナマで踊ろう"

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今年57枚目。

間違いなく音楽通の選ぶ2014年ベストアルバム最有力候補でございます。

リリース前から業界人の皆さんが盛り上がり過ぎてて、ヒネくれ者のワタシとしてはいささかお腹いっぱい感すらありました。


なので今さら私ごときが客観的な素晴らしさを語ったところで、音楽誌の三番煎じくらいのことしか言えないわけですが、ごく個人的に思ったことだけを。



一聴してみて、ふと思い出したことが二つ。

一つはNHKドラマ『ロンググッドバイ』の柄本明演じる原田平蔵のこと。


原田はドラマの中で『テレビという新しい娯楽で大衆をアホにする。それが彼ら自身の求めていることだ』というようなセリフ(ウロ覚え)を吐いてメディアを支配し、さらには原子力導入を公約に掲げて政界に進出していきます。



終戦から間もなく、原爆で甚大な被害を受けたばかりの国に、娯楽で目をくらまして輝かしい未来としての原子力を受け入れさせる。


このアルバムの3曲目『めちゃくちゃ悪い男』の話なんじゃないかと思ってしまいましたよ。

ま、実際に正力松太郎がやったことなんですけどね…。



もう一つ は、朝日新聞がスクープしたいわゆる吉田調書。


SF映画から生まれたチャイナシンドロームという言葉が、まさに苛烈な現実に立ち向かう指揮官の口から出たということ。

さらに、その事態が放水車のガス欠という、滑稽とも言える要因によって引き起こされたということ。


そして何より、その初歩的な要因を見つけなければ、人類の英知を結集してもなすすべのない事態となっていたこと。


原田平蔵もとい、正力松太郎の時代から数十年、間違いなくこの2011年3月中旬こそ、日本人がこのアルバムで描かれた世界(人類滅亡)に最も接近した瞬間だったし、実は今この瞬間も、そう遠ざかったわけでもない。


にも関わらず、みんなワールドカップやらオリンピックやら、中古CDなんかに夢中になっているというこの現実。


何が言いたいかといえば、俺たちはみんな、『ナマで踊る5分前の世界』を生きているんじゃなかろうか、ということです。今も昔も相変わらず。




そういう認識に立って改めてこの作品を聴いた時に、果たしてこれは、原田平蔵におけるテレビ、現代におけるワールドカップやオリンピックに類するものなのか、はたまた我々に新たな気づきをもたらす福音なのか?なんてことを考えてしまった。


 

ナマで踊ろう(通常盤)

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ナマで踊ろう(初回盤)

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