ドリーミー刑事のスモーキー事件簿

バナナレコードでバイトしたいサラリーマンが投げるmessage in a bottle

GEZANとトリプルファイヤーのツーマンを観に行った日。

トリプル・ファイヤーとGEZANという、世にも奇妙な組合せのライブ。 オミクロンと猛烈な寒さを避けるため、浜松までは電車ではなく車で向かう。朝は雪が振ったけど、夕方にはすっかり晴れた。浜松に来るのは20年3月の宇壽山貴久子さんの写真展とトークショー…

「ミニマル/コンセプチュアル展」を観に行ってPINKMOON RADIOを聴いた日。

愛知県美術館で開催されている「ミニマル/コンセプチュアル」展へ行ってきた。デュッセルドルフのギャラリスト・ドロテ&コンラート・フィッシャー夫妻が収集した作品を中心に、60年代から70年代にミニマル/コンセプチュアルアートというジャンルを確立させた…

有休の日の散歩。

本日有休。しかし休演ではない。 案の定、朝から上司からしょうもない用事でメールやらチャットやら電話が来てうんざり。別にそんなに休みたいわけではないのだが、休みを邪魔されるということ自体がストレスなのだ。 このまま家にいると結局仕事をしてしま…

どついたるねんを聴きながら豊田市美術館「絶対現在」展を観た日のこと。

「百鬼夜行」を観に行った次の日。英検を受けたいという娘の勉強に付き合いながら、豊田市美術館でもらったパンフレットを眺める。昨日は時間がなくて断念したコレクション展に河原温や杉本博司の作品が展示されてたのか…。行きたい。しかし時間がない。と一…

ホー・ツーニェン「百鬼夜行」を観に行った日のこと。

豊田市美術館で開催されていたホー・ツーニェンの個展「百鬼夜行」は二回観た。でもあともう一回は観たかったな…というくらいの見応えだった。 一度目に観た時は、妖怪という古典的・土着的な存在に新しい命を吹き込む手法の鮮やかさ、視覚・聴覚を完全に奪…

コーネリアスと東京五輪、私たちの90年代。2021年9月から11月の話(未来の人へ)

※7月に書いた記事の続きです。 dreamy-policeman.hatenablog.com 9/15 Twitterで明日発売の週刊文春に小山田圭吾のインタビューが載るというニュースを知る。しかし「小山田圭吾 懺悔告白120分 障害者イジメ、開会式すべて話します」といういかにも週間誌的…

ボロフェスタ最終日の記憶

名古屋駅で新幹線に駆け込んでから「そう言えばのぞみって京都に止まるんだっけ?」とボケてしまうほど久しぶりの一人旅。19年3月の「うたのゆくえ」以来二年半ぶり、そして初めてのボロフェスタに参加するために京都へ。 しかしこの二年半、京都は常に私の…

サニーデイ・サービス「TOKYO SUNSET」

2021年の夏。 俺もおかしかったし、みんなもおかしかった。まだ何も決着がついたわけではないけど、10月13日にリリースされたサニーデイ・サービスの新曲「TOKYO SUNSET」は、この狂った夏を走り抜けたアーティストからの手紙のようなものだと思った。もう少…

映画「ドライブ・マイ・カー」にまつわる車の話

村上春樹の「ドライブ・マイ・カー」は出たばかりの時に読んだはずなのだけど、その内容はほとんど覚えていなかった。今回、映画を観てから改めて読み直してみたが、やはりあまりピンと来るものがなかった。主人公・家福が抱えていた葛藤が私にとってはそこ…

2021年8月22日の記録(フジロック3日目)

フジロック最終日。夜更けに降り出した雨も朝には上がり、本日も晴天スタート。天気予報は降水確率90%だったのに。今年の苗場の空はとてもいい奴。 今日は朝から観たいライブが目白押しで、その上で大トリの電気グルーヴまでどう体力をもたせるかというのが…

2021年8月21日の記録(フジロック2日目)

フジロックに行ってきました。 すみません。 出発数時間前まで、開催に対する批判が吹き荒れるTLを眺めながら悩みに悩んだけど、結局最後に勝ったのは、私のエゴだった。 新潟から遠く離れた場所に住む私にとって、フジロックは簡単に行ける場所ではない。距…

コーネリアスと東京五輪、私たちの90年代。2021年7月の話(未来の人へ)

TURNの取材で曽我部恵一さんにインタビューさせてもらった時に言われた「今、25歳に戻してあげるって言われても嫌だな。あの頃はもっと無礼だった。今は昔より純情だし、もっとけがれなく世の中のことを見ている」という言葉が強く自分の中に残っている。初…

森道市場2021に行った話

今年も森道市場に行きました。娘が期末試験の勉強してるのに毎日遊びに行くのは気がひける…と思っている間に土曜日のチケットは売り切れてしまったので日曜日だけ。 緊急事態宣言が延長された時はもう開催は無理かも…と思ったけどやってくれました。でも、換…

Moment Joonの配信ライブを観た話

人生40年も生きていると「あの時観ておいて良かったな」と後々まで語りたくなってしまうようなライブがいくつかある。5月28日に行われたMoment Joon初のワンマンライブは、(配信だけど)間違いなくそういうものであったと思う。 Moment Joonは韓国出身・大…

ミステリーサークルとbandcamp friday(東郷清丸とスカート)

美容院に行った先週末、後頭部に小さな穴を発見。いわゆる円形脱毛というやつ。思いあたる原因はコロナ以降の不条理な不遇しかない。俺は毛根までふがいないのか。しばし呆然。 5/7のbandcamp friday で入手した東郷清丸の新曲集『GOLDEN SONGS WEEK ‘21』は…

最近行ったライブの話(21年春。サニーデイ、SAGOSAID 、PALE BEACH)

去年はほぼ自粛していたライブハウス通いを再開させている。 事実上の営業禁止を強いられている音楽産業の苦境をただ眺めることと、可能な限りの感染対策をした上でライブに足を運ぶこと。そのどちらが罪深いことなのかを裁くことはもう不可能だと思うので、…

小崎哲哉「現代アートを殺さないために」を読んだ話

あいちトリエンナーレに端を発した大村愛知県知事の不正リコール問題。たぶん一般的には「うさんくさい医者と怪しげな政治家による度を超えた悪ふざけ」くらいの感覚なのかもしれない。 しかし私は、これは2000年代以降の日本社会に流れる三本の暗い濁流が混…

横尾忠則「GENKYO」を観に行った話

横尾忠則の作品はそれこそ物心ついた頃からあらゆるメディアで目にしていたが、あまりのビッグネームだからか、あるいは私の脆弱な感性のせいか、その表現にちゃんと向き合うことなくこの年まで生きてきてしまった。「アングラ」「スピリチュアル」という彼…

”田中ヤコブと家主” @wwwの配信ライブを観た話

例によって配信最終日に駆け込みで田中ヤコブと家主のツーマンライブ@渋谷wwwを観た。もう最高すぎてその晩のうちに二回も再生してしまいましたよ。 最初は田中ヤコブのエレキ弾き語りソロ。今のところ唯一のヤコブ体験はちょうど2年前の今ごろ観た「うたの…

猫の日。

海に行くつもりじゃなかった。 もとい。 猫を飼うつもりじゃなかった。 子供の頃から猫アレルギーだし、何を考えているのかよくわからない雰囲気もちょっと苦手だったし。 小学生の頃から就職で家を出るまで、実家で犬を飼っていた。コロという名前の白い雑…

私を遠くに連れてって

24歳の時に初めて車を買って以来、7台目となる車がやってきた。それまで乗っていたランクル100を、反社会的な燃費と反家計的な税金に耐えかねて売却。そのお金で買ったBMW320のワゴン。国道沿いの激安ショップに並べられていた8年落ちの中古である。軽自動車…

「土曜の午後 日曜の朝vol.2」で関美彦のライブを観た話

1/30、1/31に行われた「土曜の午後 日曜の朝vol.2」というイベントでの、関美彦さんのライブが配信された。しかも北山ゆう子、伊賀航というスーパーリズムセクションを率いたバンドセット。まさに私が夢にまで見たやつじゃないですか…。これは最高のコンディ…

文部省著 「民主主義」を読んだ話

敗戦直後の1947年に出版された中高生向け教科書。「文部省著」とあるので当時の官僚が書いたものだが、現代では考えられないくらい踏み込んだ筆致に、二度と軍国主義に戻さないという決意と良心を感じる。とても公の文章とは思えない体温がある。 例えば「熱…

佐久間裕美子+若林恵「こんにちは未来」を読んだ感想と仕事の愚痴

帰省もできないこの冬休みには絶対に本を読もうと決めて、かなり前にON READINGで手に入れてあった佐久間裕美子・若林恵「こんにちは未来」の3冊セットを一気に読み、とても刺激を受けた。 お二人の会話をまとめたこの本には、何か明確な結論が書いてあるわ…

スカート「アナザー・ストーリー」を聴いて思ったこと

スカート「アナザー・ストーリー」のフラゲに失敗した私が自分を慰めるために思いついたアイデアは「アナザー・ストーリーと同じ曲順でオリジナルバージョンを並べたプレイリストをつくる」という作業だった。 いつもならSpotifyでチョチョイとつくるところ…

2020年12月22日 サニーデイ・サービス ライブ@今池ボトムライン

今この文章が世に出ているということは、この日のライブで私はコロナに感染することは(おそらく)なかった、ということである。それが分かるまではどうしても「サニーデイのライブいってきました!」と大きな声では言えない後ろめたさがあった。そんな後ろ…

サニーデイ・サービス 『もっといいね!』

あれ以上も以下もない、何人たりとも立ち入ることのできないピュアネスだけで作り上げられたロックアルバム「いいね!」。それがまさかリミックスアルバムとして解体・再構築されることになるとは思わなかった。 参加したリミキサーはまさに多種多様。岸田繁…

リ・ファンデ『HIRAMEKI』にまつわる私的な記録

リ・ファンデ『HIRAMEKI』がリリースされた。最大限冷静かつ客観的に見たとしても、同じ日に出た田中ヤコブと並んで、ポップミュージックの一つの基準になるような名盤、と言っていい作品だと思う。 open.spotify.com ちょうど一年ほど前、リ君に連絡をもら…

スカート 、トリプルファイヤー、ミツメのライブを2日で観た週末の話。

「月光密造の夜」が私の生き方をもんのすごく深いところからひっくり返してしまった…という話はもう何回目だよってくらいにしているので詳しいことは割愛するとして、スカートのデビュー10周年を飾る「真説・月光密造の夜」もあわよくば東京まで遠征してやろ…

イノセントとドキュメント。サニーデイ・サービス「いいね!」

2020年3月18日。世界中を覆う黒く分厚い雲に一筋の光を差しこみ、新しい季節を招き入れるようなサニーデイ・サービスの新作が届いた。連日の残業でボロボロになっていた俺は深夜に一聴するなり、この作品が放つ生命力の眩しさについ涙をこぼしそうになってし…